共生委員会だより vol.51

 2年を1期として活動している共生委員会は、昨年から第7期の活動に入りました。この間、成田空港をとりまく状況は大きく変わり、共生委員会としてもその対応に追われた1年でした。
 去る12月14日、共生委員会本会議で、第7期前半の1年間に何をしてきたかについての中間報告を行いました。

 
1. 第7期前半、2007年の活動

新しいアプローチ
活動内容
 (1)共生ワーキンググループ
  1)点検
  2)地域交流
 (2)共生スタディグループ
  1)新たな共生スキームへの準備
  2)歴史伝承プロジェクト

2. 今後の対応

 (1)第7期総括に向けて
 (2)業務の充実と効率化
 (3)新たな共生スキームへの取り組み

おわりに

 

 
1.第7期前半、2007年の活動

新しいアプローチ

(1)円卓会議合意事項点検のさらなる重点化
 懸案の多くは解決に近づいたので、対象項目をいっそう絞り込み、問題を具体的かつ発展的に解決するよう臨みました。

(2)双方向対話型の具現
 業務を進めるにあたっては、地域住民と空港の双方が積極的に情報を提供し、責任ある言動で向かい合い、意見を交換することによって問題の解決をめざしました。

(3)共生ワーキンググループ、共生スタディグループの設置
 第7期は新しい共生スキームを形成するまでの過渡期と位置づけられています。
 空港会社の完全民営化によって、共生委員会体制の見直しも不可避と考えられるため、設置要項に規定される点検等の本来業務を行う共生ワーキンググループと、新たな共生スキームの形成に向けた準備作業を行う共生スタディグループを設置し、新しい体制で臨むこととしました。


活動内容

(1)共生ワーキンググループ

1)点検

イ.円卓会議合意事項
 合意事項5項目17事項のうち、重点をおく事項を中心に点検しました。

重点をおく事項◇W値の逆転現象への対応
  共生ワーキンググループでは、騒音評価指標(Lden )研究会を設け、2つの研修を行いました。
2007年(平成19年)8月21日、京大大学院松井准教授より「地域の環境と生活に関する調査」について説明。
同年10月26日、環境省山下室長補佐より「航空機騒音に係る環境基準の改正について」説明。
(詳細及び問題点と課題はこちら

重点をおく事項◇ 22時台の便数(10便/日)の遵守
 2007年(平成19年)10月26日の国、空港会社からの報告によると、事態が改善されてきたとはいえ、依然、10便/日の遵守には至っていません。

  問題点と課題
 航空会社に対する発着時刻の遵守、スケジュール繰り上げ要請などの国の指導により、数値が減ったことは評価できます。引き続き、航空会社にヒアリングの再調査を行うなど改善を進めるほか、めどが立たない場合への対応を含め、今後、議論することとしました。

◇その他の点検
 2007年(平成19年)5月21日、国、空港会社から、航空機からの落下物について報告があり、2006年度(平成18年度)は横芝光町1件、成田市1件、計2件でした。また航空機の洋上脚下げ実施状況の調査結果では、2006年度(平成18年度)の遵守率は99.7%でした。

  問題点と課題
 国、空港会社は真摯に対応し、相応の成果を上げていますが、今後もさらなる関係者の努力を求めます。

ロ.情報公開
 2007年(平成19年)10月26日、空港会社から、今後の具体的な取り組みについて報告があり、11月14日、スケジュールが示されました。
・簡明なパンフレット(民家防音工事助成制度)の作成
・「くうこうだより」に地域コミュニケーションコーナー設置
・災害・事故緊急情報のテレホンサービスの検討
・CSRレポートの発行
・「クウタンクラブ・プロジェクト」(仮称)の設立

 問題点と課題
 この提案は、情報の意義、重要性を再確認し、全社をあげて取り組むものとして、早急な着手を求めました。


2)地域交流
 2007年(平成19年)9月28日、多古町航空機騒音等対策協議会と交流会を行いました。(詳細はこちら
 同年10月26日、担当委員および協力者から、共存共生から共栄へという新しい流れに対応する、空港関係者との交流など、新たな視点での「共栄型」の交流実施案が出されました。

 問題点と課題
 地域交流は、空港整備にともなうマイナス面を軽減するため、空港周辺市町の騒音下住民や住民団体を対象に行ってきましたが、引き続き、地域委員を中心に活動を強化する必要があります。
 「共栄型」についても具体化します。


(2)共生スタディグループ

1)新たな共生スキームへの準備
 3つのヒヤリングを行いました。

2007年(平成19年)4月16日
・国土交通省から「今後の国際拠点空港のあり方に関する懇談会」報告と今後の展開について
・空港会社から完全民営化に向けた検討状況について
同年6月27日
・同省から交通政策審議会航空分科会の最終答申内容と、アジア・ゲートウェイ構想をめぐる論議について
同年10月26日
・同省から空港会社の完全民営化に向けた検討状況について

 問題点と課題
 成田空港は、建設決定から40年以上の歴史を経て、2008年(平成20年)は開港30周年の節目を迎えます。その間、シンポジウム、円卓会議で提唱された「共生」理念が共有され、今日に至りました。そうしたなかで、共生委員会の点検活動によりマイナス要素への対応が担保され、歴史伝承委員会の活動によって「共生」理念の普及、深化が図られました。空港会社自身も、エコ・エアポートの推進や緑化施設の整備など、さまざまな共生策を実施し、地域と空港の信頼関係の強化に努めてきました。
 地域との共生が半永久的な課題と位置づけられている以上、新しい共生スキームを考えるにあたっても、共生策の継続、担保をどう確保するか見極めなければなりません。


2)歴史伝承プロジェクト
 2007年(平成19年)10月26日、歴史伝承委員会から提出された10年間の「活動成果報告」の内容や今後の方向性を討議しました。
 歴史伝承プロジェクトは、地域住民から収集した多数の実物資料や、面談資料を蓄積しており、その分類整理はもちろん、成果の社会的還元を果たすことが望まれています。そのため最もかかわりの深い空港会社が、会社としてどう対応するか、2008年(平成20年)1月末までに素案を提出することになりました。

 
問題点と課題
 同プロジェクトの今後のあり方については、2008年(平成20年)1月に予定される空港会社の素案提示に先立ち、国、空港会社、千葉県、関係市町に、プロジェクトチームを立ち上げて方向性を確認し対応するよう求めました。そのうえで、少なくとも2008年(平成20年)夏までには結論を出すよう期待します。


2.今後の対応

(1)第7期総括に向けて

1)業務を集大成します
 共生委員会は1994年(平成6年)12月に設置されて以来、すでに13年を経過し、2008年(平成20年)、第7期は任期満了となります。
 この間、主要業務である円卓会議合意事項の実施状況点検を中心に活動をつづけ、その結果、多くの懸案が解決され、地域と空港の共生は確実に実現に向かいつつあります。しかしながら、成田空港問題に終止符を打つに至っていません。
 そのため第7期後半は、14年にわたる共生委員会活動を集大成する方向で業務を進めます。

2)全活動の記録集を作成します
 通算14年間の共生委員会活動の全容を把握し、総括する記録集を刊行します。

(2)業務の充実と効率化

1)共生ワーキンググループ・共生スタディグループの業務を深化させます
 第7期後半もこの方式で業務を深化させます。また、共生委員会本会議に合わせて両グループを開催するなど、連携して業務を推進します。

2)関係者間調整の促進を
 共生委員会活動にとって、委員みずからが積極的に対応するのはもちろんのこと、国、千葉県、空港会社など関係者の協力が不可欠であり、連携をさらに強化します。
 とくに新しい共生スキーム、歴史伝承プロジェクトについては、国、千葉県、空港会社などで構成するプロジェクトチームの検討を待つことになりますが、その場合、共生委員会との意思疎通を十分に行うことが必要であり、両者で実現に努力します。

(3)新たな共生スキームへの取り組み

1)プロジェクトチームによる早期結論を
 共生委員会は法的な基盤なく活動してきました。シンポジウム、円卓会議の流れを受けて、国の提唱で成立したものですが、基本的には関係者からの信頼で存立しています。
 こうした経緯を踏まえ、国、千葉県、空港会社に対し、早急にプロジェクトチームを発足させ、新たな共生スキームへの検討を始めるよう求めます。

2)移行に万全を期す
 新しい共生スキームの検討に際しては、2008年(平成20年)秋までにその結論を出すことが必要です。その際、共生理念の原点を確認するためにも共生委員会の意見を聴取するなど、移行にともなう問題の発生を未然に防止し、万全を期すよう期待します


おわりに

 共生委員会第7期の後半は、社会状況がさらに厳しさを増すと予想されます。前途多難ですが、ここは果敢に挑戦していくしかありません。全力を傾注して後半に臨むことを確認し、前半の総括とします。


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