共生ワーキングループ

◆騒音評価指標Lden研究会研修
 
日  時: 2008年(平成20年)9月5日(金)午後2:00〜
場  所: 成田空港地域共生委員会事務所
出席者: 空港会社、千葉県、成田市、芝山町、共生財団、共生ワーキンググループ、共生委員会運営チーム

◇講演
「成田空港周辺における航空機騒音評価の問題点と今後の方向性」
元成田市空港部技監(兼)空港対策課長 林 直樹
 
◇意見交換
共生委員会だよりNo.56に出ている問題で、第1種区域に指定されている加茂地区よりも、無指定の大里地区のほうが最小、最大のW値が高いという事実がある。これはどういうことかという質問に対して、2500m滑走路供用後になお且つこういう状態ならば見直すべきであるという回答だった。2500mになって、より大きな飛行機がより頻繁に飛ぶようになれば、加茂の騒音レベルが上がることは確かだが、同様に大里も上がるわけだから、2500mになって騒音暴露が大きくなったときに、そのことによって逆転が解消されるという論理にはなっていないと思う。どうもこういう種類の応対が多い。逆転現象に対して、最初、環境省がまったく取り合わなかったという話があったが、こういうところに1つの問題点があるような気がする。
他国の測定データとの比較・検討が可能、Lden等の等価騒音レベル関連指標が国際的には主流ということだが、WECPNLは比較対象がないということであったけれども、Lden方式になった場合、例えばヨーロッパの国々の環境基準と、今回環境省が定めようとしている環境基準とではどちらが重いのか、軽いのか。それから、実際に何らかの騒音対策等がなされていると思うが、そういったものが日本と外国を比較して、進んでいるのか、遅れているのか、といった情報が入ってこない。日本では成田は進んでいると言われているが、そういう情報は持っているか。
平成6年に私たちがミュンヘンに行ったとき、日本から行った人たちの多くは世界中でWECPNLを使っていると思っていた。しかし、ドイツでもイギリスでもWECPNLを使っていないから、まったく議論が噛み合わなかった。そういうことをもって、これは情報公開をして、成田でも一元化しなくてはいけないと思った。今の話でいけば、国際的には主流であるが、むしろ、Ldenだけではダメだというのが主流となっている。アメリカ等では、Ldenだけでは守られないということで裁判を起こしている人たちもいる。やはり、睡眠妨害など健康に関わるものの指標をつけないとダメだという話になる。正に情報公開をきちんとやって、他国ではどういう値を出して、どういう指標を決めているという話を積極的に出す以外にないのではないか。
・そうすると、Ldenに変更されるまであと4年あるわけだが、環境省あるいは国交省に対して、今後、同じようなLden方式をとっている国の環境基準や対策の基準等についての情報公開を、きちんと積極的にやってほしいと要望していかなくてはいけないと思う。
 
◇総括
 非常に内容の深い解説であったと思う。逆転現象に最初に気づいて問題提起したにも関わらず、環境省がまったく取り合ってくれなかったということ、LdenとWECPNLの読み替えにしても、平均値で13を引くということでいいのかと。最適な近似がたとえそうであったとしても、コンターに引き直したときに住民側に不利になるようでは適正な読み替えとは言えなくなる、という指摘は非常に貴重である。
 いちばん大事なことは、騒音による生活妨害や睡眠妨害をなくす、あるいは減らすことである。本来はそのために騒音レベルを測定し、それを規制する。エネルギーの測定や算式や数値は、生活妨害や睡眠妨害をなくす、あるいは減らすための手段であるが、それが全てになってしまって、算式に合っているから、数値以下だから我慢しないといけないということになると、生活妨害や睡眠妨害のほうは二の次になり、それが最大の逆転現象であるといえる。その問題に対して、成田市と松井グループの調査(※)というのは、非常に詳細かつ生活実態に根ざした形で、改善策を提起していると考える。そういう点では、Ldenの採用から運用という方向に制度的には行くけれども、あくまで生活妨害や睡眠妨害を減らす、なくしていくという努力がすべての基本で、数式も精緻もすべてそのための手段である。本来の目的である騒音によるアノイアンスの減少ということを要求していかなければいけないし、実際に空港会社や環境省にも働きかけていくという方向性は正しいと思う。改善方策としても、ここでまとめられたような改善の方向性というのは非常に適正なものだと考えられる。簡単に言えば、飛行機の機種、時間帯、飛行構成、飛行モードというものを細かく見ていくことによって、実際の生活妨害あるいは睡眠妨害を減らしていく。そのためには単発騒音レベルの測定という非常に有力な手段も定められているわけだから、こういうものを活用して、本来の目的である生活妨害や睡眠妨害を少なくしていく努力を続けていく。そのための十分な調査資料、研究資料がこれまでに蓄積されてきた。

2007/8/21 騒音評価指標(Lden)研究会研修を参照

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