円卓会議合意事項点検の総括について



 共生委員会は発足以来、円卓会議合意事項の実施状況を点検する作業を主要業務と位置づけ、真正面から取り組んできました。
 このたび、空港公団の民営化によって新しい状況を迎えたのを機に、点検作業とその結果をあらためて振り返り、問題点を把握する作業をおこないました。


1.点検の作業

(1)地域部会を中心に点検
 点検作業は、地域部会を中心におこなってきました。国、空港公団から合意事項の実施状況について説明を聞き、資料を分析することから始まり、共生の実現に向けて地域の声を反映させるべく議論を交わしました。
 さらに、具体的な事柄を正確に把握するため、地域委員が現地に出かけ、洋上脚下げ点検、着氷調査、農業用ビニールハウス汚染付着物の採取、分析に立ち会ったり、新消音施設(NRH)の視察などをおこないました。
 そうした点検作業の結果は、本委員会に報告され、審議されました。また、地域との交流会でも活用され、住民のみなさんからの苦情・意見に対する対応を明らかにするうえで役立ちました。

(2)「点検表」で集大成
 点検結果は、空港公団、国が実施した対策を時系列的に整理し、「点検表」として記録してきました。
 この点検表は累計101ページにも及び、関連資料も含めると膨大なものとなっています。これは共生委員会と国、空港公団の真剣な対応を集約したものであり、空港公団時代の点検とその結果の集大成といえます。

2.点検の総括

(1)総体的には大きく前進
 点検作業の結果、多くの事項は実施に移され、共生の実現に向けて前進しました。
 これは国、空港公団が真摯に対応した結果であり、その点は高く評価されていいでしょう。エコ・エアポート基本構想の展開、共生財団の設立、共生大綱の制定などにも、前向きに取り組もうとする姿勢がうかがえました。

(2)今後の課題
 しかし、地域には依然として不満の声が少なからずあります。その原因の1つは、対応が十分でないものや新たな問題が発生したことによると思われます。
 たとえば、2本の滑走路の谷間地区でW値が下がり騒音測定のあり方に不信感が高まったこと、経年変化で民家防音工事の効果が減衰していることなどがあげられます。
 こうした問題の解消と、さらなる共生の実現のために、今後とも点検と対応が必要であると考えます。
項  目 課  題 ○実績 ●今後中心となる課題
1.
騒音
問題
民家防音工
  事再助成
・再助成制度の具体化
・再助成制度の条件緩和
○95.10 再助成制度実施 ○96.12 再助成制度の条件緩和 ○97.07 共生財団設立(10月事業開始)
●恒久的助成制度に向けた再々助成制度の検討
民家防音工
  事施工改善
・B工法サッシの軽量化と
 改善策
・防音サッシ修理助成の公
 平化
○95.10 C工法で市販サッシの使用選択可能に ○96年度 サッシの調査、メーカーに低減化を要請 ○99.04 B工法サッシ交換工事でC工法との差額分を財団負担 ○02.06 防音工事経年変化実態調査 ○03.04 サッシ部品交換、限度額改正(助成率80%⇒95%)
●サッシの軽量化と改善策 ●経年変化対策
低周波騒音 ・実態調査及び原因究明 ○94年度 年3回の実態調査、結果を公開 ○01.04 新消音施設(NRH)の運用を開始 ○02.09 10ヵ所で実態調査を実施 ○03.05 がたつき防止策、共生財団の新規事業に
●引き続き調査を継続
飛行コース ・飛行コースの遵守
・平行滑走路供用開始後の
 飛行コースの地元協議
○飛行方法や標準経路を航空路誌に記載 ○98.03 空港情報センターにて航跡図を公開 ○99.01 飛行コースの遵守状況を監視 ○99.04 平行滑走路供用後の標準飛行コース、地域の了解を得る
●飛行コースの遵守
体制整備 ・騒音研究機関の設置と監
 視システムの整備
○97.10 共生財団内に航空機騒音調査研究所を設置、騒音監視、観測を一元化 ○02.03 航空機騒音監視システムを再構築 ○03.03 共生財団実施の航空機騒音健康影響調査、同財団理事会で報告 ○00.10 防音実体験車の導入 ○03.01〜05 共生財団により「航空機騒音に関する勉強会」全5回開催 ○03 W値について環境省が見直す方向で検討に入った
●W値の逆転現象の解消へ ●騒音下住民の健康影響の把握
エンジンテ
  スト
・営業騒音対策
・消音施設の整備
○98.04 APUの使用制限を航空会社に指導・要請
○00.04 営業騒音常時監視システム運用開始 ○01.04 新消音施設(NRH)の安定した運用を開始 ○95年度 早朝・深夜の営業騒音について月1回巡回・監視を実施
防音林・防
  音堤
・4000m滑走路関連
・民地取得を伴う平行滑走
 路関連の整備
○99年度 4000m滑走路関連の防音林・防音堤の整備進捗率90% ○04.03 平行滑走路関連の防音林・防音堤の整備進捗率56.8%
●防音林・防音堤の整備
低騒音化 ・航空機の低騒音化に向け
 ての積極的取り組み
○02.04 旧基準機(Chapter2)の運航禁止 ○02.10 ACI騒音インデックスシステムをACI世界役員会で採択
●低騒音化についてさらに取り組む
隣接区域対
  策
・第1種騒音区域の外側対
 策の充実
○97.10 共生財団の事業開始に伴い、隣接地区住宅防音工事を実施 ○01.05 暫定平行滑走路の供用に対応して、隣接区域を指定
2.
移転
問題
移転の公平
  化
集団移転
・移転希望者に対する移転
 補償の公平化
・地域社会のつながりを維
 持した集団移転
○騒防法2種・騒特法特別地区の移転希望者に対し建物の移転等実施 ○要望を受け、これまで6地区の集団移転を実施
区域外移転 ・80W以下(未満)の一定
 地域の移転希望者の対策
○01.05 千葉県、騒音対策基本方針の見直し・線引作業後、都市計画決定
3.
落下物
問題
再発防止 ・点検整備、洋上脚下げの
 徹底
○毎年冬季に洋上脚下げの遵守状況調査を実施
○96.05 ATISを活用して、洋上脚下げを指導 ○98.02 運輸省、航空会社・メーカーに、機体の構造改善に係る検討を要請 ○99.08 運輸省の要請を受け、米国連邦航空局が氷塊落下物に関する耐空性改善命令を発出
●北側からの着陸時の対策
4.
環境
問題
自己監査 ・環境問題の自己監査方法に
 対する、第三者意見の反映
○94.12 地域環境委員会の設置
緑、林の回
  復
・失われた緑、林の回復につ
 いて計画的な推進
○95.03 成田空港周辺緑化基本計画策定 ○緑化整備事業(芝山水辺の里、三里塚さくらの丘、成田市さくらの山、やすらぎの杜等)実施 ○水辺環境整備事業実施
●緑、林の回復の計画的推進
環境情報の
  公開
・騒音、大気、水質等測定値
 の情報公開
○95.03 空港情報センター設置 ○96.04 成田空港環境レポート創刊 ○98.05 エコ・エアポート基本構想発表 ○空港周辺の地下水に係る水質調査の実施 ○放水路、空港周辺の河川の水質測定の実施 ○01.06 農業用ビニールハウス汚染調査の実施 ○暫定平行滑走路供用後の騒音測定結果を報告
●農業用ビニールハウスの汚染
5.
電波
障害
電波障害対策 ・電波障害対策の実施 ○99年度 4000m滑走路対応の受信障害対策を終了 ○02.03 暫定平行滑走路対応の対策を終了 ○03.02 受信障害実態調査実施、障害が認められた地点での対策工事実施 ○03.03 共同利用施設の受信対策、関係市町村と相談し対策を実施 ○テレビジョン受信障害対策補助の実施
●調査の結果、障害が確認できた住宅への対応
6.
滑走路
計画
平行滑走路
横風用滑走
  路
・話し合いにより解決
・平行滑走路供用時点であら
 ためて地域社会に提案し、
 賛意を得る
○平行滑走路の整備については、あくまでも話し合いにより解決することを、基本的考え方(96.12)、共生大綱(98.07)で表明
●平行滑走路については、話し合いにより解決 ●横風用滑走路については、あらためて地域社会に提案し、その賛意を得る
飛行回数
深夜便の運
  航
・地域社会に重大な影響を及
 ぼすことから、供用開始に
 あたっては、騒音対策の実
 施状況を含め、改めて地
 元、関係住民と協議
・飛行時間の順守
・谷間対策
○94.10 円卓会議の閣議報告による方針に沿って施策を行う ○谷間対策への補助 ○平行滑走路供用前に環境対策が後追いとならないよう対策を実施 ○99.07〜01.07 騒音実体験調査の実施
●22時台の便数は1日平均で10便を超えている
●回数増加について地元、関係住民と協議
7.
移転
跡地
跡地の整備 ・移転跡地の十分な管理 ○移転跡地は農用地として貸付けたり、エコ・エアポート基本構想に則して果樹園的管理、地力の増進など地域農業の振興に取り組む
●移転跡地の有効活用 ●移転跡地管理



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