空港公団の民営化問題


 国の特殊法人改革の流れのなかで、国土交通省は、成田空港については、経営基盤が整ったのでできるだけ早くに民営化を目指したいと述べました。
 成田空港が民間会社になると、いったいどのような会社になるのでしょうか。重要な命題である共生策は、民間会社にどのように反映させていくのでしょうか。
 民営化への動きは住民にとっても無視できない問題です。
 共生委員会では、このたびの動きについて、国・空港公団から説明を受け、問題点を整理しました。参考にしながらみなさんもぜひ考えてください。


 成田空港が民営化すると、国際競争力のある自立的な経営ができ、利用者の利便を向上させることができる。
 民営化にあたっては、
)平行滑走路2500m化等の空港整備の推進
)環境対策・共生策の確実な実施
)災害復旧等の対応
等について、国が責任をもつことが必要である。とくに、環境対策・共生策については、過去の経緯をふまえ、地域と空港との共生を実現するための努力が引き続き必要不可欠であるとしています。
 基本的な方針としては、経営責任を明確にし、経営基盤を安定させながら新会社へ円滑に移行し、国家財政にも貢献させる。その際、いろいろな課題への対応については、国出資の特殊会社として、法規制措置をすることによって担保できるとしています。
 事業範囲としては、環境対策・周辺対策を事業および責務として規定するとともに、経営効率化に役立つあらたなサービスも幅広くできるようにしたいとしています。
 つぎに監督規制として、特殊会社が事業を適切におこなわないときは、国から監督命令を出す。外貨規制をおこない、我が国の空港として外国の資本に独占されないような一定の規制が必要としています。


 空港周辺の自治体9市町村は、成田空港の民営化について意見をまとめ、四者協議の場で、国・空港公団に申し入れました。
 それによると、本来計画の2500m滑走路の早期整備、成田新高速鉄道、空港環状・放射状道路などの整備、共生策の恒久的な制度の確立、中長期の地域振興策、地方自治体の出資可能な措置、空港公団用地について従来どおりの貸し付け、芝山鉄道の延伸と経営への取り組みなどが欠かせないとしています。


 共生委員会でも、この民営化に関する疑問や不安について質問をしました。
・成田は我が国唯一の国際内陸空港であり膨大な騒音地区を抱えている。この事実にどう対処していくのか。
・民営化後の「空港公団」に所轄官庁としてどう臨むのか、積み上げてきた共生策の担保はどうなるのか。
・成田空港問題が完全に解決されてない状況で民営化となれば、今後先行きが不安である。
・成田空港周辺自治体連絡協議会と空港公団の間で6項目にわたる協定が結ばれている。これはどうなるのか。
・共生委員会的な監査機能はどうするのか。「共生大綱」はどう引き継がれていくのか。


 各委員からも次のような意見が出されました。
 「長い空港問題の歴史の責任を国が明らかにして、今がある。空港が民営化したとき、国の役割が不透明だ」「地域との折り合いをどのようにつけるかが最大の問題。また地権者は、国策だからと土地を開け渡した経緯がある。その意向も汲んでくれないと、いきなり民間会社では納得できない」「2500m滑走路の当初計画をきちっと実現し、この地域が平穏になることが望まれる。その責任者の国が手を引くのか」などの意見が出ました。


 では、成田空港の民営化は、いつから、どのような形で、実施されるのでしょうか。
 国土交通省は、「2003年1月の通常国会に民営化法案を上程したい。そこで法案が通れば2004年度中をめどに、国が100%出資する特殊会社にする。その後、経営が順調にいって株式上場できる見通しがたてば、ここであらためて法律を改正し、完全な民間会社に移行したい」と述べました。
 今後、民営化への動きはますます早くなるでしょう。共生委員会では、これらの動きについても、住民の立場できちんと注視していきます。




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