成田市では、土室地区において、4000m滑走路と暫定平行滑走路を離着陸する航空機の騒音を測定し、WECPNL値(以下、「W値」という。)を算出しました。
 その結果、暫定平行滑走路のみで算出した値に比べて、4000m滑走路と暫定平行滑走路の測定値を合計したほうが値が低くなるという現象が起きてしまいました。
 2本の滑走路の騒音を足せば大きくなるはずなのに、数字の上では小さくなってしまうのです。
 成田市は、「騒音が低く評価されるのは住民に不利」と、評価方法を見直すように環境省に申し入れました。
 W値は、1965年(昭和40年)にICAOが世界に提唱した評価方法です。わが国では、1973年(昭和48年)からICAOの計算式を簡略化した日本方式を採用してきました。
 共生委員からは、「W値を1上げるためには100機くらい離着陸が増えないといけない計算になる。これは本質的な問題」「欧米の空港で騒音の説明をうけたとき、W値を使ったところは1つもなかった」「逆転現象があらわれたことで、地元では、国や空港公団に対する不信感が増している。地域と共生する空港として前向きに取り組み、信頼出来る方策をみつけてほしい」「国の騒音基準にW値が採用され、どのような推移で今日に至ったのかきちんと解明する必要がある」「うるささ感とW値が一致しないというのは、ずっと抱えてきた問題。国や空港公団、地域住民が一体となってこの問題を考える時期がきた」などの意見がでました。
 これに対して、国土交通省は、「環境省も大きな問題と認識している。住民にとって不安がないような方策はないか、われわれも踏み込んでいきたい」と、答えました。
 共生委員会としても、空港の建設と運用をチェックする立場で、関係者と協力し問題の解決に取り組みます。

 成田空港周辺での住宅防音工事は、1978年(昭和53年)から実施されてきました。防音工事をすると、B工法の住宅では25dB以上、C工法では20dB以上が遮音されるということでした。しかし長い年月を経て、遮音性能が低下しているのではとの声が住民から寄せられたことから、空港公団では空港周辺の防音工事済住宅について調査しました。
 調査は目視調査と騒音測定のふたつの方法でおこなわれました。目視調査は、成田市、芝山町、横芝町、松尾町、河内町の防音工事済住宅275件で実施。騒音測定は、防音工事済住宅70件でおこなわれました。
 結果は下記の表のとおりです。
 総合評価(1)から(4)までに該当する家屋は、件数で243件、88.4%でした。これら9割弱について、空港公団は、共生財団が実施している制度を活用して遮音性能を上げることができるとしています。
 共生委員会では、遮音性能について、「今の防音工事では、長期的に機能を維持するのは困難。施工方法を抜本的に改善することを検討いただきたい」「防音住宅でなくても遮音量が確保されている住宅がふえている。騒音地域に住んでいる人の心境になって取り組んでいただきたい」などの指摘をしました。

防音工事済住宅の遮音性能経年変化総合判定

総合評価 目視調査による評価件数 騒音測定件数 騒音測定で遮音量をみたしていない家屋件数
(1)増築により未防音区画が生じた家屋 74 17 1
(2)現状のままで問題のない家屋 0 0 0
(3)開口部の修理を要する家屋 100 21 4
(4)開口部等の取替・修繕を要する家屋 69 16 10
(5)再防音工事が必要な家屋 18 6 2
(6)矯正を要する家屋 10 3 2
(7)改築が必要な家屋 4 3 0
騒音測定をしたが、目視調査をしなかった家屋 - 4 2

合計

275 70 21


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