空港公団の民営化
成田空港はどうなるのですか

 昨年暮れ、政府が出した特殊法人整理合理化の方針にともない、国土交通省は、空港公団の民営化案を出しました。
 成田空港は、この民営化によっていったいどのような姿に変わるのでしょうか。さまざまな意見を整理しながらいっしょに考えてみましょう。
 

 国土交通省案では、成田空港、中部空港、関西空港を、上物会社と下物法人に分けるとしています。上物はそれぞれ民営化し競争させ、下物は成田空港・中部空港・関西空港をあわせて、1つの公的法人とします。
 上物会社は、空港の管理運営、直営事業などをおこない、旅客ターミナル等を保有します。下物法人は、土地と基本施設のみを保有し、上物会社から施設使用料を得ます。成田空港の場合は、それを空港の整備、大規模改修、騒音対策、共生策等の費用にあて、とくに共生策・環境対策に80億〜100億円をあてるとしています。さらに関西空港、中部空港の建設によって生じた債務を年間150億円程度負担できると試算しています。



 千葉県と周辺市町村は、この問題について話し合い、つぎのような結論をだしました。
 「成田空港を、我が国の表玄関として、国際水準の魅力を備えた空港とするために民営化すべき。
 民営化にあたっては、国・空港公団が地域に約束してきた責任を果たすために、公的主体の存続が必要。そのため、全面民営化ではなく、上下分離方式とすべき。
 また、国の3空港一体案では、成田空港の下物法人が支社化してしまい、責任体制が不明確になる。関西空港建設などによる債務償還負担を30年間にわたり転嫁されることは国際競争力の低下につながる」。

 共生委員会では、論点を整理しながら、国・空港公団に質しました。
 1つ目は、成田空港のみが内陸空港で、第1種から第3種まで広大な騒音区域を抱えているということがあります。
 2つ目は、成田空港が発展していくためには、地域との共生は永遠の課題です。しかし、下物法人が騒音問題等の責任主体となれば、上物会社は地域と向き合う機会が少なくなりかねません。
 3つ目は、3空港一体の上下分離・民営化方式の場合、下物法人は成田空港における騒音等の対策、共生策に年間どの程度の額を確保できるのか明確にすることが必要です。
 4つ目は、成田空港が日本の空の玄関として機能することが最重要課題だということです。国際競争力を保つために、国の民営化案が有効なのか、厳しく吟味する必要があります。
 5つ目は、成田空港の上下分離・民営化は、本来、空港整備システム全体の見直しと同時におこなわれることが望ましいということです。



 共生委員会では、これらの論点をもとに話し合いました。
 委員からは、「現実に飛行機を飛ばして騒音を発生させるのは上物会社。問題がおきたとき、だれが責任をもつのか。国土交通省は、滑走路を貸している下物法人が責任を持つというが、法的根拠が希薄。責任主体が下物法人も上物会社も含むというのであれば、ああそうかと思うが」「中部や関西に対して年間150億円もの負担を肩代りするとなると、空港が事業として成り立つ前提条件がくずれ、株主から厳しい評価を招くのでは」「下物法人を三者一体にするほうが行革上望ましいということだが、需要を過大評価し、コストを過小評価しているために問題がおきる。実際、関西空港では、地盤沈下が止まっているはずの7年目に200億円もの追加費用が必要になっている。こうした責任体制がごまかされる。空港ごとに独立させる方が財政上合理的なのでは」などの意見がでました。



 国土交通省は、「今の設置者の考え方をもう一度整理しなおさなければならない場面が出てくる可能性はあるかと思う」。また、「民営化や上下分離案については、最終的には、法制局・財務省・その他と詰めなければならないことが山程ある。現在、成田でお約束してきたことは、国・空港公団が責任をもっている。これをいかにして、きちっと引き継いでいくのかという、この一点に尽きる。今の空港公団の責務を、上物が負うのか下物が負うのか、最終的な形によって違ってくるので、おっしゃるように上下合わせて、最終的に残った形態の法人と国がちゃんと責任をとる形で引き受けると、これだけは確認させていただきたい。ただ、現時点では、三者一体の下物法人は、明確な経理区分によって経営責任の問題には対応できると考えている」と、述べました。
 共生委員会は、「空港の民営化は地域にとっても重要な問題。人々には不安や戸惑いもある。そういったものに耳を傾け、県や地域のコンセンサスを得る努力をしていただきたい。すべて決まってからの報告とならないよう、今日の議論を具体的にどうクリアしていくのかを私たちの目の前に提示していただきたい」と、要請しました。



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