2005年度(平成17年度)は成田空港問題が大きく揺れ動き、成田空港地域共生委員会としても、そうした状況の変化への対応を迫られた1年でした。
 その状況の変化とは、平行滑走路の整備(北伸案)が具体化したことです。国土交通省、空港会社は本来計画によって平行滑走路を整備する方針で、東峰区地権者と折衝を続けてきました。7月には、国土交通省の岩崎航空局長、空港会社の黒野社長が現地入りし、千葉県の堂本知事も参加しましたが、用地交渉は進展しませんでした。
 このため、最終的に北伸案を選択せざるをえなくなり、8月に北側国土交通大臣から北伸案で平行滑走路を整備するよう指示が出されたのです。こうして本来計画と違って、北へ滑走路が延長されることになりましたが、こういう事態になって、想定外の問題が発生することは避けられないでしょう。
 共生委員会としては、騒音問題をはじめ、地域住民に多くの負担を強いることのないよう取り組まなくてはなりません。国土交通省、空港会社に再三、説明を求め、共生委員会の立場を伝えました。
 このような経過を経て、11月14日に『平行滑走路の整備(北伸案)に関する見解』をとりまとめました。この見解の基本的立場は「地域のなかに紛争の火種を残し、あるいは新たな紛争をひき起こすことのないように、あくまでシンポジウム・円卓会議の流れを受けて、成田空港問題総体の解決をめざして全関係者が取り組んでいくことを強く要請する」というものです。
 そして北伸については「本来計画と異なる北伸案の選択になったのは、残念な事態といわざるをえない」が、「東峰区地権者との困難な長い交渉、成田空港に対するさまざまな要請が強まりつつある状況を考えれば、この際、北伸案はやむをえない判断である、と認識する」との立場をとりました。
 その一方で、地域に対し、北伸によって成田空港の将来像がどうなるかをはじめ、騒音コンターの変化、発着回数の増加などについて、丁寧な説明と情報開示を行い、地域住民が不安を残さないようにすることを強く求めています。
 共生委員会としては、これからもこうした姿勢を貫き、事態の推移を従来にもまして注意深く見守っていくことになるでしょう。
 そのほか、当然のことながら、共生委員会として本来の業務にも精力的に取り組んできました。それは円卓会議合意事項の点検です。この点検では、2つの取り組みをしました。
 1つは共生委員会が発足以来、実施してきた点検を、空港公団の民営化を機に、集約し総括したことです。その結果を集大成して、11月に『成田空港問題円卓会議合意事項点検記録集〜共生をめざした10年間の軌跡〜』として上梓しました。もう1つは点検対象の重点化、点検作業の効率化を進め、さらに点検を通じて、地域と空港の間に双方向対話型の関係を構築するようめざしたことです。
 平行滑走路の整備(北伸案)の具体化によって、成田空港問題はいっそう流動化する気配が強まりました。共生委員会としては、この機を逸することなく、成田の地に光がもたらされるよう全力を傾注しますので、さらなる理解と協力をお願いします。



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