この1月、共生委員会にコンマ(句読点)が打たれました。7期14年つづいた共生委員会活動に、ひと区切りつけられることになったのです。
 しかし、これは過渡的な措置であって、共生委員会活動にピリオド(終止符)が打たれたのではありません。なぜなら、地域と空港の共生はいわば永遠の課題であって、成田の地に空港がある限り追求し続けなくてはならない命題だからです。
 これまで共生委員会は成田空港問題円卓会議の合意事項(たとえば騒音対策、落下物対策など)の実施状況を点検することを主要業務としてきました。それによって、空港の設置、管理、運用に関する民主的手続きの確保、地域環境の改善を図り、地域と空港の共生の実現に資することを目標としてきたのです。
 その合意事項は大小合わせて22項目、若干の曲折はありましたが、国や空港公団(現在の空港会社)が真剣に取り組んだ結果、ほとんどの懸案は解決に近づきました。共生委員会の所期の目的はほぼ達成されつつあるといえます。
 むしろ問題は合意事項に含まれていない新たな懸案が顕在化してきたことでしょう。完全民営化、平行滑走路の2500m化、年間発着回数の増大(試算では30万回可能)などが相次いで俎上にのぼり、それに地域がどう向かい合っていくかが問われるようになりました。また、地域のほうでも「共存共生から共栄へ」の動きが強まり、周辺9市町で構成する成田国際空港都市づくり推進会議が着実な歩みをつづけています。
 こうなると、共生委員会としても、状況の変化をふまえた活動をしていかなくてはなりません。合意事項点検を中心とする活動にコンマが打たれたのは、当然の成り行きと思われます。
 今後、改正空港法の施行、完全民営化への移行、空港容量の拡大など、成田空港をとりまく状況はさらに大きく変化し、それにともなって地域との共生のあり方についても再構築を迫られることになるでしょう。そうした事態に備え、共生委員会活動にはコンマが打たれたものの、4月から暫定的な組織を発足させ、次なる共生スキームの準備に入りますし、地域と空港の共生、共栄にも新しい視点で取り組んでいきます。その意味で、これからも共生の灯が点しつづけられることに変わりはありません。ひきつづき、ご理解、ご協力をお願いします。
 

共生委員会は、第7期をもって終了するにあたり、7期14年にわたる円卓会議合意事項の点検について各事項の総括を行いました。

T重点をおく事項

●W値の逆転現象への対応
 航空機騒音に関わる環境基準が一部改正され、評価指標がWECPNLからLdenに変更されることになりました。これによって、逆転現象は解決されます。
 一方、Lden研究会からは、航空機騒音による夜間の睡眠妨害が健康被害の主因をなすとの報告がありました。これをもとに共生委員会は、夜間の騒音を軽減することが重要であるとして、22時台の便数の遵守、航空機の低騒音化、新たな騒音評価方式への移行にあたっては、住民感覚により近づくよう改善を図る、などについて関係者の協力を要請しました。
●平行滑走路の供用開始時における発着回数は20万回を限度として、その後の回数増加は地元と協議する
 22万回への増便はすでに了承されていますが、国土交通省と空港会社は、2500m平行滑走路の供用までに、地元に対して、22万回時における各滑走路の年間発着回数と1日あたりの運航計画をより詳細に示すなど、住民感情に配慮した丁寧な説明を行うことが必要です。また、今後、さらなる発着回数増加の協議が行われる場合も、双方向対話型の丁寧な話し合いをするよう、要請しました。
●22時台の便数(10便/日)の遵守
 成田空港では、騒音対策のため、22時台の便数は各滑走路とも1日10便以下と決められています。これについては、関係者の努力で徐々に改善されてきましたが、いまだ守られるには至っていません。国土交通省は、21時台の出発便の遅れが主な要因であるとして、運航スケジュールの調整に努めています。
 国土交通省と空港会社は、暫定平行滑走路の運用時間を制限していましたが、これを解除し、2009年(平成21年)夏ダイヤから、4000m滑走路と同じ6時から23時までにすると発表しました。制限解除にあたっては、22時台の運航に影響を及ぼさないようスケジュール調整を行うことを要望しました。
 2500m平行滑走路の供用開始時には、両滑走路において22時台運航の合意事項を遵守できるよう、航空会社に働きかけることを要望しました。

U必要に応じて報告を求める事項

●民家防音工事の経年変化対策
 防音工事を開始してからすでに四半世紀が過ぎました。そのため、住宅の老朽化や防音工事箇所の老朽化が生じています。経年劣化を正確に把握できる体制を早急に整備するとともに、新たな防音工事についても計画通りの遮音効果があるかどうか測定を行うなど、定期的な経年劣化の把握に努めるよう要望しました。
●落下物の再発防止
 南側から進入する航空機は、洋上で脚下げすることによって氷塊の落下を防止しています。しかし、2008年度(平成20年度)は、2件の航空機部品の落下事故が生じました。落下物は、住民にとって生命に関わる問題であり、航空会社への指導・要請の徹底を強く要望しました。

V事態の推移を見守る事項

 民家防音工事の恒久的助成制度に向けた「再々助成制度」の検討、電波障害対策などについて、引き続き努力するよう要望しました。


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