成田空港では、22時台の発着回数は各滑走路1日10便以下と定められています。現在、暫定平行滑走路では深夜22時以降の離陸便について21時台への繰り上げ措置を実施しており、22時台の発着は行われていません。一方、4000m滑走路では、1997年度(平成9年度)以降、1日10便を上まわる状況が続いています。
 これに対して、国土交通省は次のように説明しました。
 「航空会社にスケジュールの繰り上げ要請を行い、なおかつ成績の悪い航空会社についてはヒアリング調査をし、指導を強めてきた。
 また成田空港では、2005年(平成17年)、騒音の少ない航空機ほど空港使用料金が安くなる新料金制度を導入し、低騒音化を促してきた。これにより、最も騒音値の高いB747型機は、2007年(平成19年)6月の1ヵ月間で100機を超えていたが、今年6月には60機に減少した。
 さらに、空港会社は施設整備を中心に行い、貨物取扱いの効率化により遅延防止を図り、航空会社は前便遅れ対策やハンドリング対策、機材整備対策などにより定時運航率を高めてきた。
 これら関係者の努力によって、2005年度(平成17年度)をピークに2年連続して改善傾向が見られるが、1日10便を超える状況は今も続いている。
 実際に2007年度(平成19年度)、4000m滑走路での22時台の発着を調べてみると、ほとんどは出発機で、その約4割が21時台、20時台に出発しなければいけない航空機であった。しかも21時台の出発機は42%が、22時台では72%が貨物便であり、貨物の遅れが22時台の運航に影響を与えていることがわかった。
 そこで22時台に発着した便数をさらに細かく10分刻みで調べてみると、22時10分までに発着したものが、23%を占めていた。これらの中には、21時台にスタートしたにもかかわらず、滑走路までの地上走行に時間がかかり、数分遅れで22時台にずれ込んでいるものも見られた。ちなみに22時10分までに離着陸したものを除くと22時台の便数は9.7便となる」。

 これについて共生委員は、「単なる変更ではなく、もう一歩踏み込んだスケジュールの見直しができないか。場合によってはペナルティを課すとか」と質しました。
 国土交通省は、依然として、1日10便以下という合意事項の遵守に至っていない状況について、「航空会社に、21時45分以降のスケジュールの繰り上げをさらに要請している。引き続き改善への努力を続けるが、場合によっては会社名を公表するペナルティも検討課題」また「平行滑走路をうまく使えないかということも、10便を遵守していくにあたっての有効な選択、手法だと思っている」と述べました。
 山本代表委員は、「微速前進、成果が上がっていることは事実、しかし目的が達成されたかというとまだその域には達していない。成田が内陸空港であり、非常に重い経緯を抱えてきたことを肝に銘じてほしい。地域としては心配している」と、今後の努力に期待を示しました。

 共生委員会では、この問題について2007年度(平成17年度)より「騒音評価指標(Lden)研究会」を立ち上げ、3回の研修会を行い検討してきました。
 研究会の座長である河宮代表委員代理は、この研修会について「W値の逆転現象への対応という形で立ち上げたが、実はW値の逆転現象をなくすことが主題ではない。騒音評価指標というか関数が不適切で、現実の音を過小評価する系統誤差があったため、あるいは騒音の実態をきちっと捉えるものでなかったために結果として逆転現象が生じた。つまり、評価そのものをより正確に正していくことに本質がある。騒音被害を減らすためには、まず騒音を適切に評価する。その派生的な問題として逆転現象の処理ということがある」と説明しました。

 第1回目の研修会では、京大松井准教授により、成田市と共同で行った「地域の環境と生活に関する調査」の結果が発表されました。第2回目の研修会では、環境省から、新しい環境基準「Lden」の採用が報告されました。この基準は2013年(平成25年)に実施予定とのことです。

 第3回目の研修会が今年9月に開催され、元成田市空港部技監兼空港対策課長、林直樹さんから京大との共同研究についての説明を受けました。
 その中で林さんは、「この調査では、騒音評価指標値(WECPNLなど)で騒音の影響を推定するのではなく、被害の実態や実感から騒音の影響を評価した。
 結果、夜間の睡眠妨害が健康上深刻な影響をもつことがわかった。これを軽減するためには、夜間の最大騒音レベルの測定と規制が有効である。これは従来の騒音規制では十分認識されていなかったこと。
 夜間の騒音妨害についての評価は、新環境基準Ldenだけでは不可能で、最大騒音レベルとの併用が必要である」と話しました。
 河宮座長は3つの研修会を終えて、「騒音問題の現状や規制のあり方について明快な理解を得ることができた。得られた知見をもとに騒音対策が今後めざすべき方向を考えてみたい。
 当面、取り組むべきことは、夜間の高レベル騒音をなくすこと。住民の健康被害や睡眠妨害を軽減するために、まず22時台の発着回数を遵守し、低騒音型機への移行を促すなど、夜間騒音抑制への国・空港会社・航空会社の意識的な連携、協力を要請したい。
 さらに、夜間の最大騒音レベルへの規制導入や総暴露量に対する規制の強化、国際的基準との整合化なども望ましい改善目標である。我々としては、貴重な方向性が出たと受け止めたい」と、感想を述べました。
 山本代表は「夜間の問題はそのとおり、あらためて関係者で検証しなければならない。共生委員会としては、引き続き点検を進めていく」と述べました。



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