共生委員会だより vol.55

1.航空機への氷塊付着状況調査


 国土交通省と空港会社は、航空機の落下物対策として、毎年、成田空港に到着した航空機の機体への氷塊付着状況を目視でチェックしています。今年も、1月15日から2月1日までの2週間、朝8時から午後5時まで実施しました。
 調査実施機数は2,171機で、うち22機に着氷が認められました。
 内容としては、過去に大きな氷塊が認められたラバトリー関連への着氷は4年連続ゼロで、これについては改善への努力を評価するところです。
 しかし今年は、胴体ドレイン(水抜き部分)付近への着氷が18件と多く見られました。この理由としては、例年よりも外気温が非常に低かったため、機体外板の温度が上昇せず、地上付近で機外に排出された液体が着氷に至った可能性が高いということです。

2.洋上脚下げ実施状況調査

 南側から進入する航空機は、地上への氷塊の落下を防ぐために、洋上で脚下げをすることになっています。国土交通省と空港会社は、毎年11月から3月、航空機の洋上脚下げ実施状況を調べています。
 2007年度(平成19年度)は、総点検機数4,231機、うち不適切機は11機で、遵守率は99.7%でした。
 委員は、「4000m滑走路はゼロなのに、暫定平行滑走路では11機。この違いは何によるのか」と質しました。空港会社は、推測としながらも「暫定の方が着陸態勢に入ってからの距離が長いので、そこに原因があるのでは」と述べました。
 国土交通省は、遵守できなかった航空機については、航空会社に事情説明を求め、洋上脚下げの遵守徹底を指導しているということです。

3.落下物について

 2007年度(平成19年度)の航空機からの落下物は、成田市に氷塊が1件でした。
 落下物は年々減少していますが、さる5月13日、ジャルウェイズの成田発シドニー行きの便から香取市内の畑に航空機部品が落下しました。
 国土交通省は日本航空とジャルウェイズに対し、原因究明と再発防止の徹底を図るよう指導し、これを受け、ジャルウェイズは、同系列型機全54機について緊急一斉点検をしました。日本航空からの報告では、部品は胴体下部パネル部分で、パネルハッチの閉め具合が不十分だったと推測されるとのことです。
 委員は、「氷塊もそうだが、部品の落下は飛行コース下の住人には非常に大きな衝撃である」と、さらに厳しい指導を要請しました。

 成田空港では、22時台の発着回数は各滑走路1日10便と定められています。ところが、4000m滑走路において、1997年度以降、10便を超える年が続いてきました。
 2005年度は1日14.1便にまでなりましたが、その後、2006年度は13.2便、2007年度は12.7便と一定の改善が見られます。
 この改善に向けて国土交通省や空港会社、航空会社はどのような取り組みをしたのでしょうか。
 国土交通省は、2007年、2008年と航空会社にスケジュールの繰り上げ要請をし、主要航空会社へのヒアリング調査を行いました。
 空港会社は、南部貨物地区前スポットでの給油を可能にし、直接貨物を搭載できるよう施設を整備して順次供用を開始しているとのことです。さらに今後も、第7貨物ビル整備により貨物の取り扱い航空会社を再配置して荷さばきの効率化を図るとともに、貨物地区にスポットを増設するなど、遅延防止を図るとしています。
 航空会社は、具体的な対策として次のように取り組んでいます。
 前便遅れ対策では、前便の発地遅れがそのまま遅延の原因に挙げられるので、出発地で貨物を積むときのハンドリング委託先を変更し潜在的な遅れの要因を押さえたということです。
 貨物のハンドリング対策としては、離陸滑走路に近いスポットを割り当てる、貨物受付の締切時刻を切り上げる、積荷の乗り継ぎ、コンテナへの積み付け作業を他地域で行うなど成田空港での搭載搬出作業の軽減化を図っているとのことです。
 機材整備対策としては、航空機の機材を更新することにより、整備による遅れや機材の不具合による遅れを解消するとともに、整備作業を自社化して効率的な対応を実現するとしています。
 その他、乗客への積極的な案内でドアクローズを早めるなど定時運行率を上げ、また定時運行に向けて全社的な検討体制を立ち上げ、新たな対応策を引き続き検討するとしています。
 この間、関係者の改善への努力がみのり、2年連続で数値に改善が見られました。しかし、依然として、1日10便という合意事項の遵守には至っていません。
 国土交通省は、今後も引き続きヒアリング調査を行い、必要に応じて指導をするとし、なお1日10便のめどが立たない場合は、実効性のある手段の導入や目標値の妥当性の検証などの対応策も検討するとしています。
 共生委員会としては、国・空港会社、航空各社の努力を評価するものの、目標達成まであと一歩、関係者にさらなる努力を求めました。

問題の解決へ向けて、研修会を重ねています。

 共生委員会では、「W値の逆転現象」や「W値が住民の実感と合わない」という問題に対応するため、共生ワーキンググループに騒音評価指標(Lden)研究会を設置して研修会を重ね、検討しています。
 W値の逆転現象は従来のW値算式に不備があったためで、これを修正すれば技術的には解決されることが分かりました。環境省は、環境審議会から「航空機騒音にかかる環境基準の改正について」の答申を受け、W値の計算上の改善にとどまらず、騒音評価指標を「WECPNL」から「Lden」という新しい評価方式に改めることとし、2013年(平成25年)の切り替えに向けて準備作業を進めています。
 しかし、それで問題が解決されたとはいえません。新しい評価方式も一日平均の騒音レベルという視点で捉えており、平均レベルとしては基準をクリアしていますが、現実に生活している住民は睡眠や聴取妨害という具体的な生活妨害の度にストレスを受けます。
 本来は住民の騒音ストレスをなくすための基準であるはずが、それをすり抜けて生活上の騒音ストレスが発生するという矛盾があります。
 そこで、この点についての成田市の調査に基づく研修会を7月25日に開催し、本来の目的である住民の騒音ストレスを抑えていくための有効な手立てを探っていきます。
 (研修会は、都合により9月5日に延期となりました。)



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