共生委員会だより vol.55

 成田空港は、2004年(平成16年)4月1日から国が100%出資する株式会社になっています。
 国土交通省では、昨年から「空港整備法」、「航空法」という法律の一部を改正する作業を進めてきました。その中には、当初、首都圏の国際拠点空港である成田空港の完全民営化に対応するための改正事項も含まれていました。
 当初案では、成田国際空港株式会社の完全民営化に備え、成田国際空港株式会社法を廃止するとともに、廃止後においても、成田空港が国際拠点空港として適正な運営が行われるよう、環境対策・地域共生策の適切な実施の確保をはじめ、必要な措置を講じていました。
 ところが、新聞等でも話題になりましたが、有事、大規模災害、テロ対策等の安全保障の観点から講じることとしていた空港会社に対する外資規制については、公正でオープンな投資環境の整備により対日投資の促進を重視する立場の議員や一部省庁から外資規制の導入に問題があるとの意見が出されました。これに対して、外資規制に賛成の議員からは「空港インフラは日本の経済・社会において重要な役割を果たしており、外貨がそこを支配するのは安全保障上問題ではないか。」との意見や、「今までの歴史的な経緯や国策に協力するため農地を売ってきた経緯からも許せない」との意見が出されました。
 このように各方面から様々な意見が出されたことを踏まえ、政府部内で調整が行われましたが、最終的に、引き続き検討を行うこととされ、当初案に盛り込まれていた成田空港の完全民営化に対応するための改正事項については、今回の法案には盛り込まないこととされました。
 今後の予定について、国土交通省は、今回積み残した部分は、年内のできるだけ早い時期に結論を出した上で改めて法案を提出したい、と述べました。
 今後は、「安全保障」に対する脅威への対応については、内資、外資併せて幅広く議論を深める必要があり、行為規制のあり方、資本への規制のあり方など、空港会社への規制のあり方について、他の関係法令や、諸外国における政府のあり方等も参考にしながら検討を行う、ということです。


3月に国会提出された法律案とは?

 法案の主な内容は次のようになっています。
 今後の我が国の空港全体及び主要空港の中長期的な整備や運営のあり方を明らかにするために、新たに国土交通大臣が基本方針を定めるとともに、現在、第一種、第二種、第三種と分類されている空港の区分を見直し、各空港の果たしている機能や役割に応じて空港の設置管理や費用負担のルール等を定めることとしています。(なお、成田空港については、引き続き成田国際空港株式会社が設置・管理を行うことになります。) また、附則において、平成20年度中に、我が国の開かれた投資環境の整備と安全保障の観点から、空港の設置及び管理に係る制度に関して、国際的動向などを勘案し、成田国際空港株式会社の完全民営化を推進するに際して必要となる措置について、可能な限り速やかに検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとされています。
 国土交通省は、3月の共生委員会において、関係省庁や有識者とも議論を重ね、地元にも節目節目に報告を行いながら今後の作業を進めたい、と述べました。
 共生委員会では、完全民営化への議論の動向を今後も注意深く見守っていきます。


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