共生委員会だより vol.51

 合意事項の点検は多くの懸案が解決しましたが、残された問題については、I.重点をおく事項、II.必要に応じて報告を求める事項、III.事態の推移を見守る事項に分けて、引き続き点検しています。
 5月に行った共生ワーキンググループでは、重点をおく事項を中心に、以下のような報告を受け、第7期の点検に着手しました。

1.W値の逆転現象への対応

  夏にも新方式について答申。

 成田空港では、2002年(平成14年)に暫定平行滑走路が供用されて以降、騒音測定を実施したところ、騒音曝露量の増加にも拘らず、測定地点によってはWECPNL値が減少する、いわゆる逆転現象が確認されました。
 これは日本のWECPNLが、ICAOの提案したものを独自に簡略化したために起こったものであり、発着回数が増えたのにW値が下がることについて、共生委員会は、「W値が逆転したからまずいのではなくて、W値の計算方式がまずいから逆転した、騒音評価の適正化が必要」と質しました。
 環境大臣は、本年3月に中央環境審議会に「航空機騒音に係る環境基準の改正について」諮問をしました。審議会に設けた専門部会は、現行のWECPNLにかわる新しい方式として、多くの国で採用されている等価騒音レベルを基本としたLdenという評価量にしたいとし、5月17日から6月15日まで一般からの意見を募集しました。この結果を受けて、専門部会では、夏ごろにも答申を出す予定としています。
 その後の見通しとしては、環境省で新方式に変更されると、関連する騒防法や騒特法などの法令の見直し作業を行うなど、国土交通省、千葉県、関係市町での具体的な手続きが始まります。
 共生委員会でも、この新方式について、勉強会を実施するなど、一連の動きを注視していきます。

2.平行滑走路については話し合いにより解決

  話し合いで様々な対処を。

 国土交通省は、平行滑走路北伸整備について、今後とも話し合いで対処していくと述べました。
 これまでの話し合いの結果として、国土交通省は、今年3月30日、騒防法に基づく区域の告示を行いました。
 この告示を受けて空港会社では、すでに騒音対策を始めています。
 騒音区域指定に伴う騒音対策や谷間地区への第一種並の対策については、四者協議(国、千葉県、周辺市町、空港会社)で取り扱いの方針が決められ、2007年度(平成19年度)から対応が開始される予定です。
 千葉県は、2007年(平成19年)2月、北伸に伴う騒特法の騒音区域の見直しを行い、基本方針を決定しました。現在、都市計画決定に向けて手続きが進んでいます。
 空港会社は、都市計画決定がなされたのち、移転補償等の騒特法に係る対策を始めることになります。
 成田市久住地区や芝山町では道路整備等の地域振興にも取り組んでいるとしています。
 さらに、用地内に残る地権者について空港会社は、四者協議でも確認されているように、話し合いの窓口を開いておき、引き続き話し合いに努力するとしています。
 共生委員会は、これらの動きを今後とも注視していきます。

3.20万回後の回数増加は地元と協議

  22万回への合意形成。

 国土交通省、空港会社は、のべ100回を越える北伸整備の説明会で、増える航空需要に対応するために、発着回数を現在の20万回から22万回に増加させてほしいとお願いをし、地域の住民や関係者との協議に努めてきたとしています。
 この経緯について、共生委員会は、平行滑走路の整備と発着回数の増加は別の問題として話し合うべきであると、当初から指摘していました。
 これについて空港会社は、既存の施設では発着回数が限界になっており、滑走路の2500m化と併せて施設を拡大しなければならず、そのために発着回数と施設拡大、騒音コンターの説明をセットで行ったと述べました。
 その後、関係者による調整を経て、地元での合意をもとに四者協議が行われ、平行滑走路の整備に係る騒防法、騒特法に基づく騒音対策、22万回への発着回数の増加が了承されました。
 これにより、新たに500戸を越える家屋が防音工事の対象になりました。

4.22時台の便数(10便/日)の遵守

  さらに努力を積み上げたい。

 騒音対策の一環として、成田空港では、22時台の発着便数は各滑走路とも1日10便までということが決まっています。
 ところが、4000m滑走路においては、年度別の表に現れているように、1995年度(平成7年度)は9.2回だったのに比べて2005年度(平成17年度)は14.1回と、ほぼ毎年増加し続けてきました。
 問題を重視した国土交通省は、航空会社にヒアリングをし、指導するなど改善に努めてきました。
 また、2006年度(平成18年度)の冬ダイヤから、21時30分〜22時の発着ダイヤの繰り上げを航空会社に要請し、その結果、2005年(平成17年)と2006年(平成18年)の12月のある週で比較すると、週61便のうち24便が5分から10分繰り上げになりました。これによって改善傾向がみられたものの、まだ1日10便には至っていません。
 国土交通省は「実態を分析してみると、数分遅れで22時台にずれ込むものが多く、22時10分までに離発着したものを除けば9.8便になることから、さらに関係者のさまざまな努力を積み上げたい」と述べました。
 さらに空港会社は、改善策として、2007年(平成19年) 夏以降に、南部貨物地区前のスポットでの給油を可能にし、直接貨物を搭載できるよう施設整備を実施する、2008年(平成20年) 秋には、第7貨物ビル整備による航空会社の再配置により、荷さばきの効率化を図る、としています。

4000m滑走路 22時台発着便数(年度別1日平均)
年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
便数 9.2 9.7 10.8 11.2 11.1 10.5 11.2 12.6 11.7 12.0 14.1 13.2


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