共生委員会だより vol.50
 今回の点検では、まず、必要に応じて報告を求める事項として地域環境、騒音下住民の健康に与える影響の把握についての報告を受けました。
 続いて、重点をおく事項など5項目17事項について、第6期の最終点検を行いました。以下、そのなかから主要な事項について報告します。



1.W値の逆転現象への対応[航空機騒音]

  共生委員会では、現在の騒音評価方式であるWECPNLの不備をなくすため、より正確な評価方式の実現を求めてきました。
 環境省は「航空機騒音に関する評価方法検討委員会」を設け、調査・研究を続けてきました。国土交通省もこの委員会に参加しており、「新たな評価方法について、年度内には一定の結果を出すべく検討している」と報告しています。
 共生委員は「住民の音に対する実感では、WECPNL方式は理解し難い状況にある。この矛盾があきらかになった以上、国土交通省も主体性をもって検討委員会に参加してほしい」と述べました。
 共生委員会は、航空機騒音評価方式および基準値の見直しにあたっては、住民の反応調査や聴覚実験を行うなど十分な検証を行い、住民の実感に見合ったものとするとともに、諸外国の指針・基準との比較や共有のできる方式が採用されるよう、環境省への積極的な働きかけを要請しました。

2.平行滑走路については、話し合いにより解決[滑走路計画]

 北伸案による平行滑走路の整備について、2005年(平成17年)8月の方針決定後、国土交通省、空港会社は、100回を超える地元説明を行いました。
 空港会社は、2006年(平成18年)7月、国土交通省に対し、「北伸に関する飛行場施設の変更申請」を行いました。8月には、公聴会が開催され、9月に許可がおりると、同月15日、空港会社は北伸による滑走路整備に着工しました。
 北伸整備により、国が定めた平行滑走路の基本の計画が完成することになります。しかし、ここに至る過程で、成田空港の進むべき方向が明確に示されないまま、地域住民への説明が行われたため、住民に戸惑いが生じ、騒音問題への不安、供用開始後の生活に不安を抱く人々が大勢いることも事実です。
 共生委員会は、国・空港会社に対して、今後、四者協議の中で出された騒音対策や地域共生策などの地元意見への対応策を住民に対して明らかにし、「民営化に関する覚書」とともに、その早期推進を要請しました。
 さらに四者協議で、「空港会社は残る地権者との話し合いに引き続き努力する」と合意しており、成田空港問題解決のため、空港会社の積極的な取り組みを期待します。

3.平行滑走路の供用開始時における発着回数は20万回を限度として、その後の回数増加は地元と協議する[滑走路計画]

 内陸に位置し、大型航空機が頻繁に発着する成田空港は、周辺地域の環境の維持に格段の責任があります。
 22万回への発着回数の増加については四者協議で了承されましたが、地元や関係住民には十分な協議が尽くされていないとの認識もあり、不満が払拭されていないことを忘れてはなりません。
 共生委員会では、まず、航空機騒音評価方式および評価基準の見直しと騒音対策の関連、22時台の便数の遵守、発着枠が拡大された4000m滑走路の暫定枠の是正問題などを合わせて、包括的かつ明確な説明を求めました。
 北伸による平行滑走路整備と発着回数増加の問題は、どちらも騒音下住民にとって今後の生活に大きな影響を及ぼすものであり、本来、別の課題として分けて議論されるべきことは、本会議においてもたびたび指摘してきました。
 今回の経過の中で、2つの問題をセットにして了解を得ようとした印象を住民に与えたことは、遺憾です。共生委員会は、今後、この点に配慮した取り組みを要望しました。

4.22時台の便数(10便/日)の遵守[滑走路計画]

 国土交通省は、2006年(平成18年)3月、成田国際空港への乗り入れ航空会社に対し、夜間運航便の発着時刻の遵守について文書で要請しました。
 同年5月から7月にかけて、航空会社4社(対象約130機)に対して22時台への遅延理由についてヒヤリングを行いました。航空会社は、遅延の防止策として15項目にわたる対策を実施または実施を検討していると答えました。しかし、2006年(平成18年)4月から8月までの月別の記録では12.8回、11.5回、13.6回、14.2回、13.5回と10便/日を上回る状況が続いています。
 2006年(平成18年)の冬ダイヤ改正にあたっては、21時台後半の出発便ダイヤの前倒しに数社の航空会社が応じています。国は、「今後、再度ヒヤリングを行う。航空会社の対応策の実施状況についても確認したい」と述べました。
 国土交通省の取り組みは評価できますが、いまだ改善効果は現れていません。共生委員会では、今後、航空会社の改善努力が実を結ぶよう、さらなる指導、監督を要請しました。

1.4000m滑走路関連、平行滑走路関連の防音林・防音堤の整備[航空機騒音]

 空港会社は、北伸案による平行滑走路整備にともない滑走路が延長する部分で、必要な施策を北伸整備完了までに実施するとしています。
 平行滑走路東側で、防音林の生育が悪い箇所については、調査し改善策を図ると述べました。

2.地域環境、騒音下住民の健康に与える影響の把握[環境]

 航空機騒音について、2005年度(平成17年度)の測定結果では、常時測定、短期測定でも、騒防法の基準値を上回る地点はなかったと報告されました。
 大気質については、光化学オキシダントが環境基準を上回っていましたが、千葉県他地域の一般測定局全局で上回っていることから、空港周辺特有の問題とは認められないということです。
 河川の水質については、生活環境項目はほぼ基準を満たしており、地下水についても、水道法に基づく水質基準を満たしているということです。
 2006年(平成18年)1月23日、成田空港内にある中央冷暖房所の蓄熱システム蓄熱槽から溢れ出た蓄熱材(主成分パラフィン= 毒性なし)が取香川に流出し、河川の白濁が発生しました。空港会社は可能な限りの回収作業・拡大防止策を図るとともに、再発防止策を策定しました。
 低周波音、営業騒音等については、これまでと比較して変化はなく、問題化していないということです。

電波障害対策は、今後も継続して工事を進めていく[電波障害]

 現在、国の地上デジタル放送への切り替えが進んでいますが、周辺地域では、共同受信施設等を有効に活用したい意向があるため、共生委員会では、現施設の取り扱いについて、地域住民に適切に情報提供するよう空港会社に要請しました。


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