共生委員会だより vol.47

 円卓会議合意事項の点検は、共生委員会の主要業務のひとつです。発足以来の努力が実って多くの事項が改善されました。しかし、状況の変化にともない新たな問題も顕在化しています。
 共生委員会では、空港公団の民営化を機に点検内容を見直し、一昨年9月より、「今後中心となる課題」(5項目17課題)について重点的に点検をしてきました。
 この新展開による点検も今回で5回目、ようやく一巡しました。

●平行滑走路については、話し合いにより解決

取り組みの経緯
 平行滑走路の整備は、あくまで話し合いにより解決されねばならないとした隅谷調査団所見について、国土交通大臣は、1994年(平成6年)10月の閣議で報告し、その旨を空港会社に指示しました。
 その後、国は、1996年(平成8年)12月、1998年(平成10年)12月の2度にわたって、平行滑走路等の整備については、円卓会議の結論に従い、2000年度(平成12年度)完成を目標に、あくまで話し合いによって進める旨を再度表明しました。
 国・空港会社は東峰区を訪問し、話し合いを呼びかけました。しかし、用地問題は難航し、結果として本来計画よりも北へ約800mずらした2180mの暫定平行滑走路が建設され、2002年(平成14年)4月に供用されました。

現状
 本来計画への要請が強まるなか、空港会社は地権者との話し合いを進めてきましたが、用地交渉につながる見通しは立ちませんでした。国・空港会社は北伸案を選択せざるをえないとの認識で一致し、千葉県知事、空港周辺市町村長らに理解と協力を求めました。そのうえで、2005年(平成17年)8月4日、国は空港会社に北伸案による整備を指示しました。
 国・空港会社は、10月より、千葉県、空港周辺自治体、住民団体などに、コンターや施設計画案を示して騒音の影響範囲や環境影響調査について説明を始めています。

問題点と今後の対応
 平行滑走路整備が本来計画と異なる北伸案になったことは残念な事態です。
 しかし、東峰区地権者との困難な長い交渉の経緯や現状を考慮すれば、やむをえない判断と考えます。
 東峰区地権者に対しては「話し合いの窓口を開いておく」という消極的な姿勢にとどまらず、今後も誠実な対応が必要です。
 北伸によって騒音の拡大が予想される地域の住民は、大型機の発着、発着回数の増加などに大きな不安を抱いています。
 共生委員会は、北伸による平行滑走路の整備にあたっては、騒音区域の見直しも含めて、関係住民への情報の開示、十分な説明と話し合いが誠意をもっておこなわれるよう要請しました。

●横風用滑走路については、平行滑走路が完成した時点で
 あらためて地域社会に提案し、その賛意を得る

取り組みの経緯
 横風用滑走路は、平行滑走路が完成する時点であらためて地域社会に提案するとした隅谷調査団所見について、国土交通大臣は、1994年(平成6年)10月の閣議で報告し、その旨を空港会社に指示しました。

現状
 しかし、これを地上通路として整備することは別の問題として、空港会社は、2本の誘導路を整備し、そのうちの1本を2004年(平成16年)2月から供用しています。

問題点の把握と今後の対応
 現在使っている航空機の能力が飛躍的に向上し、横風用滑走路が必要かどうか疑問視する声が出ています。
 共生委員会は、地域社会にあらためて提案されるまでは議論する段階にはないと考え、当面、その推移を見守ります。

●平行滑走路の供用開始時における発着回数は20万回を限度として、
 その後の回数増加は地元と協議する

取り組みの経緯
 1996年(平成8年)12月、国は、円卓会議の合意事項に従い、平行滑走路供用開始時の発着回数は20万回を限度とし、その後の回数増加は地元と協議する、騒音対策等は22万回を想定して実施するとしました。
 1998年(平成10年)4月、平行滑走路完成までの暫定措置として、4000m滑走路の1日当たりの発着回数が、360回から370回に拡大されました。
 2002年(平成14年)4月の暫定平行滑走路供用後、発着回数はそれまでの13.5万回から20万回に拡大。騒音対策等は総発着回数を22万回として実施することとされました。

現状
 発着回数は年々増加し、2004年度(平成16年度)には約18.7万回となり、限界に近づきつつあります。
 さらに今後も、首都圏の国際航空需要は伸び続けると予想されることから、発着回数の増加は喫緊の課題となっています。
 2005年(平成17年)10月、国・空港会社は、空港周辺自治体に対して「北伸案による2500m平行滑走路が供用されると、4000m滑走路は現状の年間13.5万回、平行滑走路は年間10万回、合わせると年間23.5万回の発着能力となる。騒音対策は23.5万回を想定した騒音コンターに基づき実施し、発着回数は22万回にさせていただきたい」と提案しています。

問題点と今後の対応
 共生委員会は、円卓会議の合意事項を前提とし、まず20万回から22万回への発着回数増加の話し合いから出発すべきであると指摘しました。
 さらに、4000m滑走路側では、発着回数が22万回になった場合、暫定措置とされてきた1日当たり370回の発着が既成事実化するのではないかと、住民に戸惑いの声があります。
 平行滑走路側では、発着回数の増加にともない騒音問題が拡大するのではないかとの懸念があります。
 国・空港会社は、「逼迫する国際航空需要」を具体的に明示し、22万回時における各滑走路の年間発着回数と1日当たりの運用計画を、平行滑走路供用までに示すことが必要です。
 共生委員会は、発着回数増加に関する地元自治体、関係住民との協議については、双方向対話型の丁寧な話し合いがおこなわれるよう、その経過を注視します。また平行滑走路供用時までに騒音対策が十分におこなわれるかについても見守ります。

●22時台の便数(10便/日)の遵守

取り組みの経緯
 22時台の発着回数は両滑走路とも1日10便以下とされています。
 ところが、過去3年間の22時台の発着回数は、4000m滑走路で1日平均2002年度(平成14年度)12.6便、2003年度(平成15年度)11.7便、2004年度(平成16年度)12.0便と、各年とも10便を超えています。
 これは貨物便の荷積降しの遅れや誘導路不足などが原因と思われます。これらを解消するため、空港会社は2本の誘導路を整備し、供用を開始しました。

現状
 国は、現在、22時台の運航計画を週平均で1日当たり8便以下に抑制していますが、4000m滑走路では年間を平均して1日10便を超える事態が発生しています。
 このため国は、毎年、スケジュールを設定する際に、21時以降に発着する新スケジュール設定の禁止等を各航空会社に通知、さらに21時台のスケジュールをできる限り繰上げるよう要請しました。

問題点と今後の対応
 国・空港会社の改善への努力は認めますが、効果が表れていないのも事実です。
 とくに出発便の遅延は人為的理由が大きいと言わざるをえません。
 22時台の出発便の約70%は貨物便であり、離陸重量がもっとも重い機材が使われています。1回の騒音レベルが90デシベルを超える場所があり、住民の安眠に影響を与えています。
 共生委員会は、国・空港会社に対して、引き続き22時台の便数の遵守を強く求めました。
 さらに22時台にずれ込んだ便名を公表するなど、新たな対策の考案、空港内の航空貨物の移動・積込み等のスピード化、時間の厳守などについて、一層の努力を要請しました。


 

 伝統工芸師「正次郎」、本名石塚洋一郎さんは、江戸時代に刀鍛冶をしていた先祖から5代目、羅紗切り鋏の名人だった祖父から3代目にあたります。昭和37年に母の故郷成田で鍛冶工場をもち、以来、この地で鋏刃物鍛冶を続けて来ました。
 「工場は、父と私でこつこつと造りました。ここでは、幾つもの作業台を工程ごとに置くことができ、様々な試みができるようになりました。難しい注文がくると頭が痛いのですが、工夫してできると、それがまた評価されて注文がくるというふうで」。工場は鉄やコークスで独特の雰囲気を漂わせています。「明治の夜明けに羅紗切り鋏が日本に伝わったとき、初代の弟子だった吉田弥十郎という人がそれを作るようになりましてね、名人と言われてました。で、祖父がこの吉田さんに弟子入りして羅紗切り鋏の技術を教わりました」と、正次郎さんは鍛冶の火を起こしながら、ルーツを話してくださいました。
 その正次郎さん、「鉄は日本の古いものがいいんです。古い鉄を求め、古い製法を極めたい」と、6代目の息子さんとともに今日も鉄を鍛える日々が続いているようです。(表紙イラスト) 


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