はじめに

 平行滑走路の整備は成田空港問題の解決に深くかかわることだけに、共生委員会としては、強い関心をもって推移を見守ってきましたが、北伸案による整備が具体化し、ここに大きな節目を迎えるに至りました。

1.これまでの経緯について

 平行滑走路の整備(北伸案)が急速に動き出したのは、2004年(平成16年)11月の国土交通大臣の指示が発端でした。2005年(平成17年)7月に、国土交通大臣と成田空港会社社長との会談がおこなわれ、東峰区地権者との折衝が進展しないことから、北伸案を選択せざるをえないとの認識で一致し、千葉県知事、空港周辺市町村長らに理解と協力を求めました。そのうえで8月に、大臣は空港会社に対して、北伸案による整備を指示しました。交渉が難航して展望が開けず、一方で増大する国際航空需要への対応を迫られている状況を考えれば、国・空港会社の選択は必要不可避なものであったと理解します。
 地域にとっても、平行滑走路の整備は「地域の長期的な発展を導く基幹施設となり、早期完成は避けて通れぬ選択」〔1999年(平成11年)6月の住民フォーラム総括〕との立場をとってきたことを考えれば、整備が進展をみることになったのは共生委員会としても前進と受けとめます。ただし、本来計画と異なる北伸案の選択になったのは、残念な事態といわざるをえません。とはいえ、東峰区地権者との困難な長い交渉、成田空港へのさまざまな要請を考えれば、「北伸案はやむをえない判断」と認識します。

2.問題解決への基本的視点

 共生委員会は、北伸案の採択にあたって、それが地域のなかに紛争の火種を残し、新たな紛争を引き起こさないように、あくまでシンポジウム・円卓会議の流れを受けて、成田空港問題総体の解決をめざして全関係者が取り組んでいくことを強く期待します。
 国・空港会社としては、北伸案と本来計画の相違を十分認識して、新事態に対処していくことが必要です。「北伸案による整備」によって「成田空港の将来像がどのようなものになるか」を明示し、広く内外の理解を求め、とくに地域住民に対して、丁寧な説明と情報開示を心がけなくてはなりません。
 地域も、成田空港が有力な資源であり、平行滑走路の整備によって、付加価値がさらに増大するとの認識のもとに対応し、双方向対話型の展開をめざさなくてはなりません。

3.諸懸案の解決に向けて

 北伸案による平行滑走路の整備によって、さまざまな懸案が顕在化してくることは不可避です。共生委員会は、それらが適切な解決を見るように、注意深く見守るとともに必要な協力を惜しみません。
 騒音対策では、北伸と発着回数の増加による騒音コンターの変化などへの新たな対応が必要となります。4000m滑走路側では、コンターが現在の騒音区域よりも縮み、平行滑走路側(とくに北側)では、一部はみ出ると予測されています。これにどう対処していくか、地域住民に丁寧に説明し理解を求めなくてはなりません。
 発着回数は、円卓会議合意事項で「平行滑走路の供用開始時には20万回を限度とし、その後の回数増加は地元と協議する」、「騒音対策は22万回として実施する」とされてきました。その後、暫定平行滑走路が供用され、北伸案を提示するに際し、年間発着回数の上限を「20万回から22万回に増加したい」と提案されたほか、年間23.5万回の発着が可能であることが明らかにされました。北伸への理解を求めるのとは別に、あらためて「発着回数をどうするか」についても丁寧に説明し、地域住民の理解を求めるよう努めなくてはなりません。
 東峰区地権者との折衝については、大臣指示では「話し合いの窓口を開いておくこと」とされていますが、より積極的な対応が必要であり、当事者双方がさらに前向きに、かつ理性的に取り組んでいくことが望まれます。

おわりに

 北伸案による平行滑走路の整備はまぎれもなく1つの転機であり、この機を逸することなく、成田の地に光がもたらされるよう、全関係者が総力をあげて局面打開に取り組んでいくことを要請します。
 新しい状況のなかで、共生委員会としては、その推移を従来にもまして注意深く見守るとともに、問題解決のための協力を惜しみません。 

 



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