共生委員会は、空港公団の民営化を機に、円卓会議合意事項の点検内容を見直し、「今後中心となる課題」(5項目17課題)に力点をおいて点検しています。
 今回は、1項目2課題について点検しました。

●地域環境、騒音下住民の健康に与える影響の把握(航空機騒音、排気ガス、低周波空気振動、営業騒音等)

 空港に発着する航空機や空港の活動が地域にどのような影響をおよぼしているかを把握するため、それぞれの常時測定局で監視測定が続けられています。結果はどうなっているのでしょうか。

(1)航空機騒音
 現在、空港の周辺には、空港会社が設置した33局、千葉県・茨城県・周辺自治体が設置した69局、合計102局の常時騒音測定局があります。ここで測定されたデータは、共生財団で一元的に集計され、各機関の広報誌などで公表されています。
 また空港会社では、騒音区域で固定局とは別に、夏季・冬季に各7日間の短期測定もおこなっています。
 航空機騒音については、監視体制が整備され、情報公開されていることは評価できます。しかし、騒防法に基づく地域内のWECPNL値は基準を満たしていますが、環境庁が政策目標として示した「航空機騒音に係る環境基準」に満たない地域があります。また、うるささ指数である「WECPNL」が体感とあわないという地域住民の声も無視できません。
 共生委員会は、この件について、騒音観測データを常に点検・分析し、防音工事の実施、飛行コース・飛行時間の遵守、航空機の低騒音化などにより環境基準値に近づける努力をすることで、企業の社会的責任を果たすよう要請しました。
 
(2)大気質・水質
 成田空港は、開港以来、航空機の離着陸等が周辺の大気質にどのように影響しているか常時測定局で調査しています。その結果、一酸化炭素や窒素酸化物等の大気汚染物質濃度は、開港前と比べて大きな変化は見られないということです。
 有害大気汚染物質についても、年2回、常時測定局と同地点で調査。結果は、環境基準値内です。
 水質についても、河川、放水路などで調査が続けられており、空港周辺の地下水位についても自動観測がおこなわれています。
 また、地下水位の低下を防ぐために空港内の歩道に透水性の舗装をし、滑走路脇の芝地に砕石浸透トレンチが設置されています。
 大気質や水質の監視体制が整備され、情報公開されていることは評価できます。
 共生委員会は、引き続き実効性のある措置がとられるよう注意深く見守っていきます。

(3)低周波空気振動
 航空機エンジン試運転時の低周波空気振動が原因でおこる民家建具の「がたつき現象」は、試運転施設の改善工事により解消し、さらに新消音施設NRHを設置してから、低周波空気振動の発生が抑えられているとのことです。
 航空機離着陸時の低周波空気振動については、2004年(平成16年)4月より、共生財団が騒防法第1種区域内の防音工事済み住宅を対象に「がたつき防止対策試行工事」を実施することになりました。
 この制度化への努力は認めるものの、外壁部の建具(窓ガラス)などのがたつきについては依然として苦情があります。
 共生委員会は、離着陸時の低周波空気振動は航空機の機種・重量などによって変化するため実態把握が十分とはいえない、さらに人の健康や生活環境を守るうえで維持されることが望ましい環境基準が確立されていないため、今後も調査研究を継続する必要があると指摘しました。

(4)営業騒音等
 1999年(平成11年)、全天候型の新消音施設NRHを空港会社(空港公団)と航空会社2社で設置しました。現在、100%近い航空機がこの施設を使用し、航空機エンジン試運転時の騒音は抑制されています。また南風用の試運転施設(ブラストフェンス)は閉鎖されました。
 さらに空港会社は、空港内での地上騒音を減らし、排気ガスを抑制するために静かで排出ガスの出ない固定式GPU(地上動力装置)の整備を進めています。第2旅客ターミナルではすべての固定スポットに、第1旅客ターミナルでは第1〜4サテライトのすべての固定スポットに設置しました。改修中のサテライトの固定スポットについても、順次整備しているとのことです。
 共生委員会は、これらの対策を今後も注視していきます。

(5)航空機騒音健康影響調査
 共生財団が実施した調査の結果によると、うるささ等は住民に自覚されているものの、「情緒的・身体的影響」調査では、自覚症状として顕在化しているとはいえないとのことでした。
 今後、2500m平行滑走路供用時点で、関係者間で、調査内容や方法について協議することになっています。

●農業用ビニールハウス汚染の原因究明

 空港開港後、農業用ビニールハウスの汚れがひどくなったとの地域の声を受け、千葉県、空港会社(空港公団)は、それぞれ調査をしてきました。
 共生委員会も、空港会社の調査に、地域住民とともに何度か立ち会ってきました。
 その結果、ビニールシートの主な汚れの原因は土ぼこりで、付着物中に10%ほど含まれるカーボンも要因の1つであることがわかりました。しかし、カーボンの由来については現在の技術では特定することができませんでした。
 付着カーボンの由来の特定については、現時点では調査の続行を見送ることとし、今後の技術の推移を待って、新たな進展がみられた場合、関係者間で協議して必要な措置をとるとしています。



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