共生ワーキングループ

◆騒音評価指標Lden研究会研修
 
日  時: 2007(平成19)1026日(金)午後2:00
場  所: 成田空港地域共生委員会事務所
出席者: 国土交通省、空港会社、千葉県、成田市、芝山町、共生財団、共生ワーキンググループ、共生委員会運営チーム

◇講演
「航空機騒音に係る環境基準の改正について」
 環境省 水・大気環境局大気生活環境室 室長補佐 山下雄二、係長 田中里佳
 
◇意見交換
W値の逆転現象の原因は、ICAOの提唱するWECPNLを当時の測定技術、データ処理技術に適合させるため近似的にWECPNLを求める方式を採用したことにあるのか。
原因はそれだけではない。騒音レベルのパワー平均値は時間帯、昼間・夕方・夜間を合わせた形でパワー平均していたが、本来は時間帯ごとに違うもの。それを時間帯によらず一定であると仮定したことにも起因する。
4000m滑走路と平行滑走路からの音を、平均レベルのときに両方混ぜてパワー平均をとったことにも起因するのではないか。回数で加重した上で平均をとるのと、平均をとったものと回数を足すというのとは別である。本当は積の和に対してlogをかけなければいけなかったのに、騒音レベルはパワーだけで平均し、回数は回数だけでとったことが逆転現象の大きな原因ではなかったか。
WECPNLの近似式が、パワーレベルと機数のレベルを分けて表現していて、厳密にエネルギー積分という形で加重したものではないので、それが原因となった。
W値とLden値の相関性が高くて、ほとんど平行直線になるのであれば、現行値で逆転現象が生じて、Lden値で逆転現象が生じないということは、Ldenの信頼性が十分だということを必ずしも意味しない。平行していることと、逆転したり逆転しなかったりすることとが矛盾する。非常によく相関していれば、片方が逆転すれば、もう一方も逆転すべきである。明らかに相関していない、ずれている部分で逆転するかしないかが決まっていると説明しなければならない。逆転したということは、従来の騒音評価式に欠陥があったということを意味している。逆転しなくなったということはその欠陥は解消されたが、十分正しいかどうかということの保証ではない。必要条件をクリアしたというレベルでは改善され、逆転現象という欠陥は持たない評価式になったというふうに限定していただきたい。
Ldenでは逆転現象が生じないと理解しているが、WECPNLについてはピークレベルと機数との関係があって現実的に生じている。ただ、成田空港周辺の測定結果を用いて解析させていただいた結果、その程度は週平均で0.5dBであった。
成田市の近辺に103局の常時測定局がある。リバース音や場内音を測定できると言うが、自動測定器でこれをどうしたらよいか。
地上音の計測を自動測定でいかにしてやっていくかということは、課題として1つ挙げられる。環境省としては、新しい評価指標Ldenに基づいた測定のマニュアルを整備する検討を始めたところである。ご指摘の点をどのように捉えていくかは技術的な面の検討になると思うが、検討会の中で議論し、最終的にはマニュアルでお示しして、それに基づき測定していただく形になるだろう。現行の測定機器をそのまま使えるかどうか、現行の機器で地上音をどう取り込んでいくかというような細部の詰めが残っている。検討の結果、プログラムの変換や、新たな測定機器が必要となる可能性もあると思う。
平成15年にWECPNLとLdenの関係を環境省に報告書を添えてお願いをした。例えば成田市内の場合は、WECPNLとLdenの関係というのは、小さなところで10.4、直下で13.7、羽田等では12〜14、ある基地では16〜17というようにバラバラである。これでいくと、直線性があるからWECPNLから13を引いた値で、指針の見直しということで基準は見直さないということになっているが、どのようにお考えか。
LdenとWECPNLの相関は直線関係であると言いながらも、それぞれによって差異はあるというご指摘だが、今回は評価指標の見直しということで改正をさせていただこうとしている。現行のWECPNLの近似が継続時間20秒であるということで、そこのところの理論的な考え方と、実際の相関関係もとってほぼ直線関係にあることから専門委員会でそういう位置づけをして、Lden≒WECPNL−13ということである。
要望は、まずは科学的根拠に基づいて基準値を定めてほしい、指標だけでなく環境基準を改定してほしいということでお願いに行った。例えば、成田で12,300人以上の成人男女を対象にして調査を行ったので、そういうものに基づいて基準値を決めていただけないかという話であった。
新たな基準値を設定するにあたっては騒音のアノイアンス、夜間の睡眠影響といった知見も充実していく必要があると思う。さらに知見を集積して、必要に応じて科学的知見を得た段階で検討していきたい。
具体的に言うと、測定方法が決まっていないから、告示があって施行日までかなり時間がかかるということか。
新しい指標ということで、まずマニュアルを整備する必要がある。環境省の自動車環境対策課で整備し、それに基づいて機器の対応をする必要があるかどうかなども出てくる。モニタリング体制として国土交通省、防衛省、地方公共団体、事業者のそれぞれが測定器を設置してやっているので、予算措置をして、実際に機器を整備して、測定体制が整うところを勘案して、適用をいつにするか検討中である。
日本の大規模空港、主に国内空港だが、ほとんどが住宅地に隣接したところにある。大阪伊丹で体感したが、日中の暗騒音自体が高いので、住民の騒音実感としてギャップが少なく、あまり気にならない。成田の騒音地域はほとんどが農村地帯で、暗騒音が低いので同じ80dBでもギャップが大きい。なおかつ、長距離大型機や発着回数が多いということがある。住民実感でいうと、他空港と比べてはるかに大きいので、その辺を環境省としてよく認識して取り組んでいただきたい。
成田空港の周辺の環境、特殊性ということで、住民の方の被害実感というのはかなりあるというご指摘、発着回数等についても、そうであろうということで認識している。ご意見として今後の参考にさせていただきたい。
WHOのガイドライン、騒音に対するガイドラインというのがあって、人間が健康を維持していくうえで好ましい指針というのがある。環境基準の設定にあたって、環境省ではこういったものをどの程度重視しておられるのか。
環境省としては、アノイアンス調査や睡眠影響調査をやっていく上で、諸外国の1つの知見として踏まえて、今後検討していきたいと思っている。
健康に影響があるということは、生活している人たちにとって不安なことであり、そう悠長な問題ではない。環境基準というのは航空機騒音に限らず、時代の進化とともに基準値を厳しくしてきている。航空機騒音も昭和48年頃の話であるから、これからはLdenにしても、-13ということではなく、目標値であるから少しでも下げていくべき。それが今の環境基準の世界的な趨勢ではないかと理解している。

◇総括
 環境省として総括的な騒音評価指標の見直しを行ったのは、成田における逆転現象が1つの契機になったと思う。しかし、これは評価指標の見直しであって、WECPNLからLdenになれば、暗騒音の問題や健康との関係など、いろいろな問題がすべて解決するかどうか、それはこれからの問題だろう。とくに、成田においては暗騒音が低く、今は随分改善されたとはいえ、ジェット機の騒音がふりかかっているという状況がある。しかも、空港は日本最大の国際拠点空港としての役割を担わなければならない。したがって、問題が山積している中で、騒音問題は成田の地では半永久的に残り続ける。環境省の立場で言えば、国全体、あるいは国際的な整合を考えて1つの評価指標を出され、1歩前に出られたと思うが、騒音を肌で感じて、何か違うという人が少なからずいることも事実。私ども共生委員会の立場から言えば、成田固有の問題として対応する方法があるのかどうか、何をしなければならないのか、この研究会で検討して、方向性が見い出せたらと思う。そのときはまた環境省にご相談したり、物申したりということがあるかもしれないので、よろしくお願いしたい。

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