共生スタディグループ

日  時: 2008年(平成20年)5月23日(金)午後2:40〜
場  所: 成田空港地域共生委員会事務所
出席者: 共生スタディグループ

◇ 議題
(1)歴史伝承プロジェクト
  NAA(空港会社)素案「歴史伝承の新展開」の経緯と検証
 歴史伝承プロジェクトは空港公団民営化にともない、共生委員会の一部会から航空科学振興財団へ移管された。完全民営化に向け、歴史伝承プロジェクトについても、「新しい共生スキーム」の全体の流れの中に位置づけて検討すべきだということで、共生スタディグループ(SG)が中心になり国、空港会社、県と交渉してきた。
 こうした経緯を経て、国、県も了承したNAA素案が出された。基本的考え方は、歴史伝承プロジェクトの継続、空港会社の事業として行う、常設展示施設を整備する、の3点。
 歴史伝承委員会から3つの懸案事項が挙げられているが、その具体的な検討は、かなり先になるのではないか。今日は、NAA素案に対する共生SGとしての対応を確認し、同時に歴史伝承委員会にも内容を伝達することとする。かつ、共生SGの検討結果は6/6の共生委員会に報告する。
共生SGとしての見解
共生SGとして次のことを確認した。
NAA素案でプロジェクトは継続されるべきとしたことは評価する。
公平性の担保、所有権の問題など懸案は山積み。歴史伝承も全体の共生スキームの一環として行うべきだという意見もあり、懸案事項については、引き続き、歴史伝承委員会の意見も聞きながら、共生SGとして対応を考える。
共生SGとして歴史伝承委員会に対して、年末までに資料の整理を終了することを、再度、お願いする。スケジュールが厳しいのは承知しているが、最小限、整理し、引き継げるようにしておく必要がある。
 
(2)新しい共生スキーム
現状の解析
 新共生スキームに向けた俯瞰図をもとに、山本代表委員より説明を受けた。
 新しい共生スキームについては、状況が非常に流動的であるため、国、空港会社、県による新共生スキームプロジェクトチーム(PT)で、なんらかの形が出るのは先になると思われる。PTの検討の中で、共生委員会第7期のあとはどうなるか、ゼロということはないとしても、在来型で継続するのは非常に難しいように感じられる。地域と空港の共生という点で言えば、株主至上主義に対抗できるような新しいスキームを今のうちに考えておく必要があり、秋までには結論を出さなければならない。共生SGでも検討していく。
 羽田の問題では、完全に風は羽田の方に吹いていて、成田限界論は頂点に達してしまっている。そうした状況のなかで空港関係法案は、外資規制の問題で成田の部分を外して国会に提出されている。成田の部分は外資の問題を含めて、年末までに見直すことになっている。
 国、県、市町、空港会社の四者協議会で、民営化した時に、共生策・騒音問題に関する75項目の覚書を交わした。これはマイナスを減らす話。一方、成田国際空港都市づくり推進会議では、先日の第3回の会議で空港会社が年間飛行回数30万回の試算を出した。5/30に第4回が開かれる。この推進会議では、マイナスを減らすというよりも、むしろ30万回の推進をはじめ、プラス創出を考慮すべきではないかという意見が出ている。また、歴史伝承についても、地域対策の一環としてやった方がいいのではないか、共生財団の現在のスキームを強化して新しいことをやった方がいいのではないか、芝山鉄道も調査、実証運行を行い、次の展開を考えたらどうか、という意見がある。ということは、新しい共生スキームはそれらを担保する役割を担うようになるかもしれない。
 法案の問題、推進会議の状況などから、現在は渦を巻いていて先行きがよく見えない状況。共生SGの立場から、新しい共生スキームはこうあるべきだという意見表明をする必要があるが、どの時点で意見を出すべきか、様子を見きわめて対応する必要がある。
今後の対応
 共生SGとして次のことを確認した。
 たとえ新しい共生スキームがどういう形になろうとも、地域、住民が当事者になるようなシステムがなければならない。具体的には今後の状況をみて対応する。それを、6/6の共生委員会で報告し、国、空港会社、県に伝える。
  
◇ 意見交換
歴史伝承プロジェクト
空港会社が引き受けるというこの案を基本的には受け入れる。
何らかの形でチェック、監視が不可欠。新共生スキームの中で、当然、歴史伝承プロジェクトがきちんと行われているか担保する役割を担うことを考えるべきである。
共生委員会としても中立性を保った運営につながるアドバイスをしていくべき。
歴史伝承委員会から出されている3つの懸案事項は、クリアされなくてはならない。
収集した資料の収納スペースと常設展示場のめどを早くつける必要がある。
市町との協力体制、連携を強めていくべき。成田市、芝山町と協力し、アーカイブス化をめざすことが必要。市民が取り出し活用できるように。
新共生スキームに何らかの地域の組織体ができると予測するので、その組織を通して再委嘱するような形にできないか。どういう施設になるか分からないが、有料でもやっていける、独自の財源を持てるようにすることを考えてみる必要がある。
総括して言えば、現時点で、ようやくこの素案の段階まできたので、共生SGとしては概ね了解としよう。中立性、第三者性、所有権や法律的な問題が残っているので、第2段階で検討する。ついては、今日出た意見を整理して、空港会社、そして国、県にも伝える。
  
新しい共生スキーム
共生大綱で「成田の地に空港がある限り共生の理念は永遠の課題」だと述べている。しかし現実は住民が意見を言うシステムになっておらず、共生委員会がそれを担保する形になっているが、これだけは対応を考えなければならない。
これからも地域や住民が当事者の一人として、問題の輪の中に入っていけるスキームが要る。
年間飛行回数30万回という数字が出た時に、共生委員会がなくなっては大変だと思った。成田沈下論や羽田シフト論が声高に叫ばれるようになり、増便を要望する動きが激しくなっている状況の中で、どういう形であれ共生委員会のような組織は必要だ。
騒音地域の人たちは、かつてとは違って空港容量拡大も理解できないわけではない。空港会社と騒音地域が上手にコミュニケーションを取れる機会を作っていくために、共生委員会のような組織が仲立ちをしていく必要がある。
仲立ちする機能が絶対必要だが、どうやればよいかはこれから。
推進会議、空港会社、空対協・騒対協などの団体、成田市長、芝山町長などに音頭をとってもらい、会合を持って、地連協か推進会議の一部門としてマイナス部分の検証を行っていくように進めてもらったらどうか。
以前から言っているが、空港会社や国は成田空港の最終形を示すべきだ。30万回という便数としての最終形は示されたと思うが、ハード面ではまだ示されていない。もし30万回になったら劇的に変わり、騒音下住民の負担がさらに増えていくと思う。
最終形を示すという点では、空港側はいつも三次元の話ばかりしているが、住民は二次元にいるのだから、抽象的であっても、まず地域のことを最初に話すべき。最終形に関しては新スキームでは遅いので、早めに共生委員会として対応しなければいけないのではないか。
空港問題=用地問題というように矮小化されてしまった状況をなんとかするため、最終的には「共生」という地域と空港の関わり方の基本的理念を出し、全体を解決に導くことができた。今の空港が抱える問題も、よほど大きく構えないと価値の高い解決を生まないと思う。
空港周辺あるいはもう少し広い範囲で、中小企業など関係者が空港の内外問わずに議論できるビジネスフォーラムのようなものを作るべき。雇用創出や地域全体の活性化につながる。
新スキームの参考に、ヒースロー空港にある空港運営評議会が注目されているようだが、利用者、空港会社、航空会社、空港内外の企業、周辺住民など広範な人々が参加する組織があると聞いている。
騒音地域では、四者協議会への不信感、推進会議への不安感がある。共生委員会のこれからのスタイルは、マイナス問題の処理はある程度解決したので、地域と空港がお互いに発展していけるように、問題点を解決するための客観的なメッセージが出せるような「懇談会」というニュアンスであるべき。そのなかに、騒音対策、共生策などで新たに出てきた問題を適切に検討する役割を入れていく。
推進会議は空港会社とどこで接点を持つか、空港会社には自分のアイデンティティーをきちんと自覚してやってもらうしかない。羽田との競合で、ただ30万回の方向へ走っていくのではだめだし、空港と地域の双方がエゴを通したらどちらもだめになる。
新しいスキームについては現在進行形なので、現段階では様子を見るということでよいかどうか。
様子を見ていると遅れると思う。我々が、今の段階で「新しい共生スキームの中に、形を変えたとしても住民組織があったほうが良い」という確認をした、それに向けてもう一度検討しよう、ということを表明したらどうか。
「あったほうが良い」ではなく「なければならない」であろう。
国、空港会社、県に、6/6の共生委員会で今日の共生SGで確認したことを伝える。
 
その他
谷間の防音工事をしようとしている人で、防音工事の手続き中に家族が1人亡くなり、2人家族になってしまった。人数割りで補助が決められるため、自己負担額が多額になってしまった。この周辺の住宅は大きく、開口部も多いという事情も考えると、これは、システムとして欠陥があると言わざるをえない。このような状況で30万回を言うのはひどすぎると感じた。
その問題は20年間、絶えず問題になってきている。「覚書」にも書かれているが、棚ざらしになっている。
完全民営化して民間会社になれば、むしろ法律の枠からはみ出した対応をして、地域と向き合わなければならないはず。地域としては、そういう血の通った対策をきちんとやらないと22万回以上の増便には了解しないという交渉をせざるをえなくなると思う。


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