提言活動

2017/03/27地域振興連絡協議会会長(千葉県知事)宛の提言書を提出しました

地域振興連絡協議会
会長 森田 健作 殿


            これからの成田空港と地域との共生・共栄に関する提言


                                    平成29年3月27日  
                                    成田空港地域共生・共栄会議
                                    会長 石田 東生    



1 はじめに
 成田空港地域共生・共栄会議は、千葉県知事を会長とする地域振興連絡協議会の下部組織として設けられた学識経験者、周辺地域の住民及び関係地元団体の代表、国、千葉県、空港周辺市町の職員、成田国際空港株式会社(NAA)の役員又は社員などの多様なメンバーが参画する極めて特色ある組織である。
 この会議では、これまで、空港と地域との「共生」を目指した成田空港地域共生委員会の理念と14年間にわたるその真摯な議論によって培われた相互信頼性を継承するとともに、空港を地域の経済資源と位置づけ、空港の発展により地域の発展をともに目指すという「共栄」の実現に向け、本会議や共栄ワーキンググループ等を通じた空港と地域との更なる相互理解を深めるための協議や、空港と地域との共栄に向けた協働事業等の取組みを行ってきた。
 折しも、昨今では、ますます増大する我が国の航空需要への対応を念頭においた首都圏空港の機能強化に向けた議論が国において進められており、成田空港においても、第三滑走路の新設、夜間飛行制限の緩和等これまで経験したことのない空港と地域の変化に向けた検討が、国、千葉県、空港周辺市町、NAAから成る四者協議会において進められ、地域住民を巻き込んだ大きな議論となっている。
 少子高齢化が進む我が国において、観光を今後の基幹産業のひとつと位置付け、海外との交流人口を増加させていくべく国を挙げて努力している中、成田空港の成長が我が国の経済発展に寄与するものであることに疑いはない。しかしながら、その一方で、成田空港においては、騒音問題への対応等、地域に空港が存在しているがゆえの課題がさらに重みを増していることもまた事実である。こうした中、私たちがこれまで取り組んできた成田空港と地域住民とが共に生き、共に栄える、という「共生・共栄」の理念が持つ重要性は、従来にも増して高まっているものと考えられる。
 このため、成田空港地域共生・共栄会議においては、空港と地域との共生・共栄を目指すという活動本来の原点に立ち返り、成田空港の機能強化をめぐって最近の空港と地域との間に生じている様々な状況等について議論を重ねてきた。こうした議論を踏まえ、ここに以下のとおり提言するものである。
なお、本提言は、多様な構成員から成る当会議において、異なる立場から示された様々な意見をもとに主要な課題等をとりまとめたものであり、各構成員がそれぞれ代表する組織や団体の見解を表したものではないことを付言する。



2 提言


【提言1】空港周辺地域に暮らす住民の生活環境の維持・改善に向けた対策


〔地域コミュニティの維持等に配慮した移転・騒音対策の充実〕
 第三滑走路の新設、夜間飛行制限の緩和等を内容とする成田空港の機能強化が実施された場合には、住居の移転を余儀なくされる住民が生じるほか、騒音区域がさらに拡大するなど、生活環境が悪化することが懸念されており、地域住民からも不安の声が上がっている。関係者は、こうした声に真摯に耳を傾け、移転に対する金銭的な補償のみならず、移転を余儀なくされる地域住民のその後の生活設計にも配慮したきめ細やかな対応に努めていくことや、地域住民の夜間における安眠を確保するべく、今後生じ得る騒音被害に対して防音工事等の対策をさらに充実させることを考えていく必要がある。防音工事については、遮音効果だけでなく換気や防湿にも配慮した対策が必要ではないかとの指摘もあり、今後の工事の在り方については、騒音下住民をはじめとする地域住民からの様々な要望も踏まえながら、柔軟に考えていくことが求められる。また、こうした移転や防音工事等の対策を行うための区域設定については、ほとんど同じ騒音被害を受けているにも関わらず、隣の家は対策を受けられ、自分の家は受けられないといった、強い不満の声が地域住民から上がっていることがこれまでもしばしば指摘されてきた。対策区域の境界が既存の集落を分断し、境界線による集落の切れ目が心の切れ目となって地域コミュニティを崩壊させるようなことがないよう、今後の対策区域の見直しに当たっては、従来の運用にこだわることなく、地域住民からの切実な声に応えた柔軟な対応をとっていくことが求められている。


〔空港と地域住民との距離感の解消に向けた取組み〕
 空港周辺の地域には、成田空港が近くにありながら、その恩恵をあまり実感できないといった声も多い。成田空港の発展が地域の発展につながっていくとともに、地域の発展が地域住民の実感として共有されることが大変重要であり、こうしたことが実現してはじめて成田空港が真に地域の財産と言える存在となり得るものである。このため、関係者は、例えば、こうした地域において空港関係企業への就業機会の提供に努めるとともに、空港に関連した企業の誘致を促すなど、空港と地域住民との距離感を縮めるための施策にも取り組んでいくことが重要であると考えられる。とりわけ、少子高齢化社会を迎え全国的な人口減少が懸念される中、4万人を超える就業者が働く成田空港が地域に存在しているという利点は極めて大きく、地域にとってはこうした恵まれた環境を十分に生かしていくことが重要であるとともに、成田空港が今後とも持続的に成長していく観点からは、地域の活力を空港に継続的に取り入れていくことは大事な課題である。
 また、空港と地域との関係においては、NAAが成田空港周辺の市町に対して資金を提供するという成田空港独特の仕組みである、いわゆる周辺対策交付金の在り方がしばしば議論の対象とされている。周辺対策交付金は、これまで騒音対策、道路、河川、上下水道等のインフラ整備に活用され、成田空港周辺の生活環境の改善に大きく寄与してきているところであるが、その一方で、騒音被害を直接受ける地域の住民からは、他地域の住民に比して自分たちが受けている被害に見合うだけのメリットを受けていないなどの不満の声も寄せられている。こうしたことから、関係者は、周辺対策交付金をより地域のニーズに合った使い方に充てられるよう、その使用に当たっては、騒音下住民をはじめとする地域住民の声にも真摯に耳を傾けながら、より効果的かつ効率的に使うよう関係者で知恵を絞っていくことが求められる。


【提言2】成田空港を中心とした周辺地域の均衡ある発展に向けた一体的な将来像の共有


〔成田空港周辺地域における一体的な将来像の共有〕
 成田空港は、昭和53年に1本の滑走路と1つの旅客ターミナルで開港して以来、現在では年間4千万人近い旅客を取り扱うまでに右肩上がりの成長を遂げてきた。これに伴い、空港周辺地域においても人口増や経済効果など一定の成長を遂げてきたと評価される一方で、成田空港周辺の自治体間でその成長に格差が生じ、地域住民の間に不満が生じていることもまた事実である。現在、成田空港の機能強化について議論が進められているが、こうした議論に当たっては、成田空港を中心とした周辺地域の均衡ある発展が成田空港の発展にも欠かせないとの共通の認識に立ち、空港と地域がともに発展できる一体的な将来像を関係者で共有していくことが重要である。その具体的な手法については、関係者による共通の目標設定やビジョンづくり、成田空港を中心と位置付けて地域の一体的な整備・開発を目指す都市計画等さまざま考えられるが、いずれにしても、土地利用の在り方、農業振興の方向性、道路整備の見通しなどを考慮した具体的な取組みについて総合的に議論していくことが必要である。この際、具体的な取組み案について既存の規制が障壁となっている場合には、特区制度の活用も含め規制緩和の手法を用いることも考えられる。
 特に、成田空港周辺には広大な農業地域が広がっており、機能強化の議論とあわせて、空港周辺地域の農業の在り方について十分検討していくことは大事な課題である。こうした地域の住民は、後継者不足の問題とあわせ、農地が用地買収等に伴う移転対象地域や騒音地域となることにより、引き続き農業を継続していくことができるのか、農業用水事業をこれまで同様の負担額で維持できるのか等、様々な不安を抱えている。こうした農業を担う地域住民が抱いている将来への不安に思いを寄せ、具体的な対応策について関係者で議論を深めていくことが必要である。


〔観光振興等の空港周辺の地域振興に向けた取組み〕
 成田空港周辺には、歴史ある地域が多く、由緒ある寺社仏閣や伝統文化財、豊かな自然、郷土色あふれる名産品や食文化、活気に満ちたお祭りや伝統芸能、地域イベントなど、国内外に誇ることができる地域の財産が数多く存在する。成田空港に近いという立地を生かし、こうした財産を観光資源として域外に発信し、人と物の流れを生み出していくことは地域経済の発展にとって重要である。とりわけ、観光立国を目指す我が国において、成田空港に近いという立地を生かして、空港周辺地域からその有する観光資源を国内のみならず海外に発信していくことは、成田空港と地域との新たな共栄という観点から大事な課題となっていくものと考えられる。成田空港とその周辺地域に関わる関係者においては、こうした観光振興等、魅力ある観光資源をさらに磨き上げて地域の活性化に生かしていく取組みを積極的に推進していくことを期待したい。


【提言3】空港と周辺地域の発展を図るための道路交通の改善


〔交通結節点としての成田空港の役割の重要性を踏まえた地域交通アクセスの充実〕
 成田空港は、我が国を代表する国際空港であるが、都心から物理的に遠いという課題に対応するため、これまで鉄道アクセスの向上、低廉な長距離バスの導入など、都心との交通アクセスを改善することに特に力点が置かれてきた。その一方で、成田空港と周辺地域とを結ぶ道路交通網や公共交通機関の利便性は必ずしも高いとは言えない。こうしたことが、成田空港が地域から物理的に近いにも関わらず、地域住民から空港に対する心理的距離感を生じさせ、日常生活から離れた存在と思わせる一因となっているとともに、空港関連企業等にとっても周辺地域が就労場所や従業員の居住地として十分機能することを妨げているという点は否めない。
 こうしたことを踏まえ、成田空港が地域と都心、地域と地域を結ぶ交通結節点の役割を果たすという観点に着目し、道路整備や公共交通機関の確保など、空港を中心とした地域交通アクセスの更なる改善にも取り組んでいく必要がある。


〔地域の生活道路との調和〕
 成田空港及びその周辺関連企業で働く多くの従業員が自動車通勤をしているとともに、空港関連産業による空港への車両往来により、特に朝夕の通勤時間帯等において空港周辺道路では深刻な渋滞が生じていることがある。こうした道路は、地域住民にとっては大変重要な生活道路であり、空港関連の交通が日常生活において様々な問題を生じさせている。
 このため、今後の空港周辺道路の整備に当たっては、現在生じているこのような問題も十分考慮する必要がある。特に成田空港の機能強化に当たっては、空港敷地範囲の拡大とこれに伴う既存道路の大幅な付け替え等も想定されるところであり、地域の生活道路との調和や空港周辺地域間の連絡にも十分配慮した道路整備を検討していくことが必要である。この際、通勤車両、旅客車両、トラック等大型の事業用車両等、様々な車両が往来することを踏まえ、交通の円滑化、交通安全の確保等に配意した道路整備を図っていくことが重要である。


〔都心アクセス等幹線道路網の整備に向けた取組み〕
言うまでもなく、都心から離れた成田空港とその周辺地域にとって、都心アクセスの改善に向けた幹線道路網の整備は、普遍的で重要な課題である。特に、成田空港は、他の国際空港と異なり地盤が強固な内陸地に立地し、災害に備えた防災拠点として機能し得ることからも、首都圏との安定的で円滑な交通アクセスを確保していくことは欠かせない。現在、空港と近郊とを結ぶ整備中の重要な幹線道路としては「圏央道」や「北千葉道路」が挙げられるが、圏央道は、横浜、厚木、八王子、川越、つくば、成田、木更津などの都市を連絡する首都圏3環状道路のひとつであり、首都圏の道路交通の円滑化、環境改善、沿線都市間の連絡強化、地域づくり支援、災害時の代替路としての機能など多くの役割を担うことが期待されている一方、成田空港近傍の「大栄-松尾横芝間」の開業時期はまだ明示されるには至っていない。
 また、北千葉道路は、千葉県市川市から成田市に至るバイパス道路であり、首都圏北部や県西地域と成田空港とのアクセス強化、沿線地域相互の交流・連携の促進、物流の効率化など、地域の活性化に寄与することが期待されているが、全線開通の時期は明らかとなっていない。今後、空港周辺地域への企業誘致の促進等、地域振興を図るとともに、都心から離れた地域に住む住民の交通利便性の向上を図る上でも、これら道路の早期完成に向けて取り組んでいくことが必要である。



3 むすびに
 成田空港は、今年5月に開港して39年を迎える。これまでの間、空港と地域との関係は時代とともに大きな変化を遂げてきた。北総の地に新たな国際空港を建設することが決定されてから20年以上も続いた「対立の時代」に始まり、シンポジウムや円卓会議による「話し合いの時代」、空港によるマイナスの影響を軽減するための「共生の時代」、そして、これらを乗り越え、今日では、空港と地域とが双方向の対話を通じて相互理解を深め、ともに発展することを目指すという「共生・共栄の時代」を迎えている。
 成田空港が内陸空港である限り、こうした「共生・共栄」の理念が持つ重要性は今後も失われることはないであろう。当会議としては、この提言で取り上げた課題をはじめとする成田空港と地域とのあるべき関係や目指すべき在り方等について、引き続き様々な関係者と真摯に議論を続けながら、さらに必要な提言をしていきたいと考えている。
 貴職におかれては、提言に示された関係者の思いを十分に受け止め、その実現に向けて力強いリーダーシップを発揮されることをお願いしたい。


                                             以 上

平成29年3月27日(月) 千葉県総合企画部 遠山部長
平成29年3月27日(月) 千葉県総合企画部 遠山部長
平成29年3月31日(金) 成田国際空港株式会社 夏目代表取締役社長
平成29年3月31日(金) 成田国際空港株式会社 夏目代表取締役社長
平成29年3月31日(金) 成田空港圏自治体連絡協議会 小泉会長(成田市長)
平成29年3月31日(金) 成田空港圏自治体連絡協議会 小泉会長(成田市長)
平成29年4月5日(水) 国土交通省首都圏空港課成田国際空港企画室 鈴木室長
平成29年4月5日(水) 国土交通省首都圏空港課成田国際空港企画室 鈴木室長
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